資料3 医ケア児・者を対象とした個別避難計画の作成について その@(背景) 1 個別避難計画とは 平成23年の東日本大震災においては、被災地全体の死者数のうち 65 歳以上の高齢者の死者数は約6割であり、障害者の死亡率は被災住民全体の死亡率の約2倍に上り、平成25年の災害対策基本法の改正により、市町村に避難行動要支援者名簿の作成が義務化されました。 しかし、近年の災害においても高齢者や障害者が犠牲となっており、災害における死者のうち高齢者の割合は、令和元年台風第19号では約65%、令和2年7月豪雨では約79%に上りました。 これらを踏まえ、令和3年5月に災害対策基本法が改正され、市町村に避難行動要支援者ごとに、避難先や避難方法等を定めた個別避難計画の作成が努力義務化されるなどの規定等が創設されました。 2 医療的ケア(児・者)とは 医療的ケアとは、「人工呼吸器による呼吸管理、喀痰吸引その他の医療行為」(医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律)のことを言います。具体的には、人工呼吸器、喀痰吸引、気管切開部の管理、経管栄養(胃瘻等)、導尿、人工肛門(ストーマ)の管理、糖尿病の血糖測定・ インスリン注射等を指します。 医療的ケアを必要とする人を「医療的ケア児・者」と呼んでいます。 3 優先度の高い避難行動要支援者についての個別避難計画の作成 国の指針では、個別避難計画について、できるだけ早期に「おおむね5年程度で作成に取り組む」ことが作成目標として示されており、そのために、「優先度が高い者から個別避難計画を作成することが適当」であるとして、優先度を判断する基準が示されました。 (国の示す優先度) @地域におけるハザードの状況(浸水想定区域、津波災害警戒区域、土砂災害警戒区域等) A当事者本人の心身の状況、情報取得や判断への支援が必要な程度 ※心身の状況について、医療機器(人工呼吸器等)用の電源喪失等が命にかかわる者については優先度を判断する際に、このような事情に留意が必要である。 B独居等の居住実態、社会的孤立の状況 ※家族が高齢者や障害者等であったり、世帯に複数の避難行動要支援者がいたりする場合等、避難をともにする家族の避難支援力が弱い場合、同居家族の一時的な不在や昼間独居など、避難行動要支援者本人が独り残されて被災する可能性がある場合は、優先度を判断する際に留意が必要である。 4 本市における個別避難計画の作成状況 本市では、国の指針を踏まえ、風水害を想定して、令和4年度からハザード上の名簿掲載者数が多い鶴見区と港北区で、令和5年度はさらに対象区を拡大(南、保土ケ谷、戸塚の3区を追加)、令和6年度からは全区において作成を進めていく予定となっています。 (本市における個別避難計画作成対象者) @洪水浸水想定区域または即時避難指示対象区域に居住する方 A要介護3、4、5いずれかの認定を受けている方または身体障害者手帳1級である方 5 本市における医療的ケア児・者を対象とした個別避難計画の作成 国の指針に示されている通り、医ケア児等医療機器(人工呼吸器等)を必要とする方は、災害による電源喪失が即時に命にかかわり特に優先度が高いと判断されることから、新たに個別避難計画の作成対象として風水害だけでなく地震も想定して作成に取り組みます。 6 市内の医療的ケア児・者の人数について 現時点で市内在住の医療的ケア児・者を正確に把握する仕組みがないため、正確な人数は把握できておりませんが、現在、実態把握調査を進めています。 なお、「全国都道府県在宅人工呼吸器調査2022」の神奈川県のデータをもとにした横浜市の在宅人工呼吸器装着者数は約500人と推計しております。 【参考「全国都道府県在宅人工呼吸器調査2022」より】 神奈川県 TPPV装着者数520 TPPV外部バッテリー装備率88.2%(平均値87.6%、中央値91.4%) NPPV装着者数767 NPPV外部バッテリー装備率37.7%(平均値39.9%、中央値37.7%) 横浜市推計(人口比率から算出) TPPV装着者数193 NPPV装着者285 医ケア児・者を対象とした個別避難計画の作成について そのA(事業概要) ※令和7年度予算が横浜市議会において議決されないときは成立しません。 1 事業概要 (1) 事業名 人工呼吸器等要電源障害児者個別避難計画作成事業(仮称) (2) 事業内容 災害対策基本法第49条の14に基づく、医療的ケア児・者を対象とした個別避難計画 ア 対象者 医療的ケア児・者 (日常生活及び社会生活を営むために恒常的に医療的ケア(人工呼吸器等)が不可欠な方。) イ 事業数量(想定最大数) 医療的ケア児・者 約500人 ウ 事業手法・スキーム 医師会への事業委託及び横浜在宅看護協議会との協力協定による実施を想定 2 実現に向けた工夫 (1) 直接避難の検討 避難所との連携をより効果的に行うため、避難所への直接避難を可能とする災害対策基本法に定める「指定福祉避難所」としての運用を併せて検討。 (2) DXの活用(調整中) 避難行動支援サービスを活用し、個別避難計画作成と避難支援の実効性を確保 ア 個別避難計画作成機能(R7〜:個別避難計画の入力・共有) イ 共助避難支援機能(R8〜:プッシュ型通知による避難行動支援) 3 参考事例・先進事例 内閣府「個別避難計画作成モデル事業」による全国の取組事例 https://www.bousai.go.jp/taisaku/hisaisyagyousei/yoshiensha.html