3章、横浜市の保健医療の目指す姿、2040年に向けた医療提供体制の構築 【18ページ】 3章、2040年に向けた医療提供体制の構築 目指す姿 将来の医療需要増加に向け、限られた資源を最大限活用し、最適な医療提供体制を構築することで、必要な医療を受けられ、本人、家族が安心して生活ができる社会の実現を目指します。 指標 入院医療の市内完結率 ①急性期、一般病棟、現状、84.0%、目標、84.5% ②回復期リハビリテーション病棟、現状、86.7%、目標、91.0% ③療養病棟、現状、75.1%、目標、78.9% 在宅看取り率、現状、33.1%、目標、39.4% 施策の方向性 人口減少、高齢化に伴う医療ニーズの質、量の変化や生産年齢人口の減少を見据え、質の高い医療を効率的に提供できる体制を構築するため、医療機関の機能分化や連携を進めていくことが必要です。 2040年に向けた医療提供体制の構築に向け、5つの取組を推進します。 (1)将来において不足する病床機能の確保及び連携体制の構築 (2)医療従事者等の確保、養成 (3)高齢者を支える地域包括ケアの推進 (4)デジタル時代にふさわしい医療政策の推進 (5)医療安全対策の推進 【20ページ】 (1)将来において不足する病床機能の確保及び連携体制の構築 現状と課題 本市の病床数は、高度急性期及び急性期は将来も充足が見込まれる一方で、高齢者人口が増加することから、回復期、慢性期は不足が見込まれています。2018年度から2022年度にかけて、回復期742床、慢性期668床、その他23床の計1,433床を市内の医療機関に配分しました。 引き続き、医療提供体制の状況を踏まえつつ、病床の整備を進めていく必要があります。 今後の高齢者人口の増加に伴う医療需要の増加、医師の働き方改革による影響や生産年齢人口の減少を見据えて、既存病床の有効な活用や連携の強化等について、検討が必要です。 老朽化が進んでいる南部病院、労災病院等の地域中核病院について、再整備に向けた支援や検討を進める必要があります。 施策の方向性 本人が希望する医療を受けることができるよう、病床機能の確保及び連携体制の構築を進めます。 今後、将来に向けて必要となる病床については、次の点を考慮しつつ、地域の医療関係者等と協議を行いながら整備を進めます。 既存の病床を最大限に活用すること 市内病院の病床利用率や平均在院日数等のデータ、在宅医療で対応可能な医療ニーズ 【21ページ】 (2)医療従事者等の確保、養成 現状と課題 これまで看護専門学校に対する運営支援や市内医療機関の看護師採用支援、研修をはじめとする医療従事者の確保、養成に取り組んできました。引き続き、医療従事者の安定的な確保、養成に必要な取組を進めることが求められています。 2024年度に医師に時間外労働の上限規制が適用され医師の働き方改革が施行されます。医師の働き方改革の実現に向け、好事例集の作成や医師事務作業補助者研修などの現場のニーズに即した事業を積み重ねてきました。 引き続き、国や神奈川県の動向も踏まえたうえで、医療機関内でのタスクシフト、タスクシェアなどを支援していくことが必要です。 2020年から2040年までに医療、介護の複合的ニーズを有する85歳以上人口は約2倍に増加し、医療と介護の必要性が一層高まるため、医療と介護が切れ目なく、効率的に提供されるよう、引き続き医療、介護従事者の安定的な確保、育成に必要な取組を進めることが求められています。 施策の方向性 市内において就業する看護師が養成され、市内医療機関において安定的に確保されるなど、医療提供体制構築に必要な医療従事者の養成、採用、復職、定着等や専門性の向上に係る課題に対し、必要な支援を行います。 医療機関において、医師の働き方改革が着実に推進され、業務負担の軽減や働きやすい職務環境が実現、継続できるよう支援します。 より多くの医師が在宅医療に取り組むよう支援するほか、訪問看護師の人材育成に取り組みます。また、在宅医療、介護関係者に対して研修等を実施し、多職種連携の推進に必要な知識、技術の向上を図ります。 【22ページ】 (3)高齢者を支える地域包括ケアの推進 現状と課題 在宅医療と介護の連携について 2040年に向けて医療と介護の両方のニーズを持つ後期高齢者が増加します。 在宅看取り率は増加が続いており、在宅での療養生活を送る高齢者が増えています。 医療、介護が必要になっても地域生活を継続するためには、在宅生活を支える医療、介護従事者の連携強化、人材育成が必要です。 市民一人ひとりが自らの意思で自身の生き方を選択し、最後まで自分らしく生きることができるよう、死後の対応を含めた本人による準備についての普及、啓発が必要です。 介護予防について コロナ禍を経てフレイルの高齢者が増加しています。自立した生活を送るための能力や疾病の予防等に着目した各種医療専門職による支援や、情報提供等のほか、身近な地域で社会参加をすることができるよう、通いの場等の充実や参加促進が必要です。 フレイルの認知度は、2022年度に本市が高齢者を対象に実施した調査では約28%でしたが、性別など属性等によって格差があること、運動やオーラルフレイルの予防、低栄養の防止、社会参加等、フレイル予防に欠かせない取組を行えていない高齢者が一定数いることなどから、幅広く普及啓発を行っていく必要があります。 要支援認定者等に対して、区や地域包括支援センターにおいて、自立を支援する介護予防ケアマネジメントを実践するための取組が必要です。 施設、住まいについて 高齢者人口の推移や多様化する市民のニーズを見極めながら、適切な整備量を検討していく必要があります。また、施設、住まいに関する休日相談やオンライン相談など、市民のニーズに応じた更なる相談体制の充実が必要です。 【24ページ】 施策の方向性 在宅医療と介護の連携について 各区の在宅医療連携拠点を中心に、医療と介護が切れ目なく、効率的に提供されるよう連携を強化します。 在宅医療、介護関係者による多職種連携の推進等に必要な知識、技術の向上を目的とした研修や連絡会を実施するなど、人材育成に取り組みます。 もしものときの医療やケアについて、元気なうちから考えるきっかけとなることを目的にもしも手帳の配布を進め、人生会議の普及啓発を図ります。 糖尿病、摂食、嚥下、心疾患及び緩和ケアなど高齢期に多い疾患、課題に関する研修や事例検討等を通じて更なる在宅ケアの質の向上とチームの連携強化を図り、疾病の重症化や介護の重度化を予防します。 介護予防について 高齢者の興味関心に応じた、健康状態にかかわらず参加できる社会参加の場を充実させるため、多様な主体と連携し、様々な活動内容の展開を支援します。 フレイル状態にある高齢者やフレイルリスクが高い高齢者に対し、一人ひとりの健康課題に着目した、各種医療専門職による支援を行います。また、運動やオーラルフレイルの予防、低栄養の防止、社会参加等、介護予防、フレイル予防の普及啓発について、民間企業等と連携し取り組みます。 施設、住まいについて 個々の状況に応じた施設、住まいを選択することができるよう、支援を行います。 【26ページ】 (4)デジタル時代にふさわしい医療政策の推進 現状と課題 将来の医療需要の増加が見込まれる中、限りある医療資源を最大限に活用しながら質の高い医療サービスを提供する体制を構築する必要があります。 デジタル技術が日々進展する中、社会全体でDXの取組が進んできています。情報通信や金融、保険分野でのDXの取組が進む一方で、医療、介護分野は遅れている状況にあり、DXによる効率化や新たな価値の創造が求められています。 このような状況の中、国は国民の更なる健康増進、切れ目なくより質の高い医療等の効率的な提供、医療機関等の業務効率化、システム人材等の有効活用、医療情報の二次利用の環境整備の実現のために医療DXに取り組むとしており、今後は医療分野でのデジタル化やデータ活用に関する取組が進んでいくと考えられます。 また、近年、医療機関に対するサイバー攻撃により、個人情報の流出や医療サービスの提供に影響を及ぼす事案も発生しており、情報セキュリティへの対応が求められています。 鶴見区内において地域医療介護連携ネットワークサルビアねっとを構築し、県と連携しながら、複数エリア(神奈川、港北区の一部)に拡大してきました。国では、全国医療情報プラットフォームの構築に向けた検討が本格化しており、今後の方向性を検討していく必要があります。 複数の病院の集中治療室の医療情報をネットワーク通信でつなぎ、横浜市立大学附属病院の支援センターから遠隔で現場の医師等に助言する遠隔ICU事業を実施しています。こうした取組を医療の質の向上、医師の働き方改革につなげていくことが必要です。 【27ページ】 施策の方向性 個人の健康増進や保健医療の質の向上、効率化を図る観点で、デジタル技術やデータの活用などの施策を推進します。 医療機関に大きな影響を与える国の施策を踏まえ、地域の医療機関と連携し、医師の働き方改革にも資する医療DXに取り組みます。 医療情報には病歴等の機微性の高い情報が含まれることや、近年の医療機関へのサイバー攻撃の状況などから、デジタル化やデータ活用に当たっては、情報セキュリティの観点を踏まえて対応します。 国の動向などを踏まえ、ICTを活用した医療情報連携に関する地域での具体的な取組が進むよう支援します。 医療の質の向上、医師の働き方改革に寄与する遠隔での医療提供体制がより一層充実するよう支援します。 【28ページ】 (5)医療安全対策の推進 現状と課題 安全、安心な医療の提供及び医療安全の向上を目的として、医療法に基づき、市内医療機関等を対象に立入検査等を実施しています。2022年度に実施した立入検査における指導のうち、99.0%は改善されています。引き続き医療機関等への立入検査を実施するとともに、医療法違反が疑われる通報等に迅速、的確に対応し、安全、安心な医療提供体制の充実を推進していく必要があります。 薬物乱用では、大麻による検挙人数が年々増加傾向で、特に若年層の割合が増えています。また、身近にある咳止め薬等の市販薬を過剰摂取する薬物乱用も広がっており、様々な広報手法を用いて、薬物乱用防止啓発等を進める必要があります。 医療機関に関する相談を受け付ける医療安全相談窓口について、医療安全推進協議会での事例検討を通して得た助言を相談対応に反映していく必要があります。加えて、相談窓口の周知及び医療安全の理解促進に向けた市民啓発を行うことが求められています。 また、病院安全管理者会議等での病院間の連携及び医療安全の情報共有を通じて、医療従事者の医療安全の向上や啓発を推進していく必要があります。 施策の方向性 医療機関等への立入検査、指導等を通じ、安全、安心な医療提供体制を確保します。 大麻や市販薬のオーバードーズ等による薬物乱用の危険性について、若年層を中心に周知していきます。 医療安全相談窓口を運営するとともに、安全管理における事例や知見を市内医療機関へ共有する等、各医療機関における医療安全の確保に取り組みます。