6章、主要な保健医療施策の推進 【62ページ】 6章1、感染症対策 現状と課題 感染症を取り巻く状況は日々変化しており、適切に対応するため、感染症の発生の予防とまん延の防止、病原体の検査体制の確立、人材養成、啓発や知識の普及等を図るとともに、国や県等との連携や役割分担を明確にすること等により、感染症対策を総合的に推進する必要があります。 横浜は国際港を有し、国際空港からのアクセスもよく、企業の集積や多くの国際会議、イベントの開催により、海外との人と物の行き来が活発です。また、就業、通学により、毎日多くの人が市域外と行き来しており、国内外から感染症が持ち込まれるリスクが高く、国や県との連携による水際対策やまん延防止の取組が必要不可欠です。 本市では、1保健所18支所体制をとることで指揮命令系統を一元化し、健康危機管理機能を強化することで、あらゆる感染症に的確、迅速に対処しています。これまでの3年以上に及ぶ新型コロナウイルス感染症対応では、度重なる感染拡大により保健所業務が増大しました。今後、保健所体制の確保や感染症に関する人材の養成等を進め、来るべき新興感染症の発生に備える必要があります。 新型コロナウイルス感染症の対応を踏まえ、感染症の発生及びまん延時には、主体的、機動的に感染症対策に取り組む必要があるため、新たに予防計画の策定が義務付けられました。 施策の方向性 感染症法に基づく本市の予防計画を策定し、市民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある様々な感染症の発生及びまん延への備えを進めます。 人権を尊重した感染症対策を推進し、市民に対し感染症の啓発及び知識の普及に努めます。 新型コロナウイルス感染症への対応を踏まえ、感染症対策に関する人材の養成及び資質の向上、保健所の体制の確保等を進めます。 【63ページ】 1、基本的な考え方 ①事前対応型行政の構築 感染症発生動向調査体制を充実した上で、感染症の予防の総合的な推進を図るための基本的な指針、以下感染症基本指針という。神奈川県感染症予防計画、以下県予防計画という。本計画及び特定感染症予防指針に基づき、平時から感染症の発生及びまん延を防止することに重点を置いた事前対応型行政を推進します。 神奈川県が設置する神奈川県感染症対策協議会、以下対策協議会という。を通じ、予防計画等について協議を行うとともに、取組状況を毎年報告し、関係者が一体となってPDCAサイクルに基づく改善を図るよう努めます。 ②市民一人ひとりに対する感染症の予防及び治療に重点を置いた対策 多くの感染症の予防、治療が可能になっているため、感染症情報の収集、分析とその結果を市民へ公表するなど情報提供を進めます。また、市民一人ひとりが努める予防及び感染症の患者に対する良質かつ適切な医療の提供を通じた早期治療の積み重ねも併せ社会全体の予防の推進を図ります。 ③人権の尊重 感染症予防と人権尊重の両立を基本とする観点から、患者個人の意思や人権を尊重し、安心して社会生活を続けながら良質かつ適切な医療を受けられ、入院の措置がとられた場合には早期に社会に復帰できるよう環境の整備を図ります。 個人情報の保護、差別や偏見の解消のため、報道機関に協力を求める等、あらゆる機会を通じて感染症に関する正しい知識の普及啓発に努めます。 ④健康危機管理の観点に立った迅速かつ的確な対応 感染症の発生は、周辺へまん延する可能性があり、市民の健康を守るための健康危機管理の観点に立った迅速かつ的確な対応が求められます。 そのため、感染症の発生状況等の的確な把握が不可欠であり、国、県及び県内保健所設置市や医師会等の医療関係団体と連携し、迅速かつ確実に対応できる総合的な感染症発生動向調査体制を整備します。 【64ページ】 ⑤市の果たすべき役割 感染症の発生予防及びまん延防止のため、近隣自治体等と相互に連携し施策を講じます。また、正しい知識の普及、情報の収集、分析、提供、研究の推進、人材の養成、確保、資質の向上及び迅速かつ正確な検査体制の整備等、感染症対策の基盤整備を行います。この場合、国際的動向を踏まえるとともに、感染症の患者等の人権を尊重します。 対策協議会にて、関係者と平時からの意思疎通、情報共有、連携を進め、対策を行います。また、感染症基本指針及び県予防計画に即して本市予防計画を策定します。 保健所は地域における感染症対策の中核的機関として、また、衛生研究所は本市における感染症の技術的かつ専門的機関として、それぞれの役割が十分に果たされるよう、本市は関係部門を含め全庁一丸となって取り組むための体制整備や人材育成等の取組を計画的に行います。 広域的な地域に感染症のまん延のおそれがあるときには、県等と相互に協力しながら感染症対策を行います。 新型インフルエンザ等感染症等発生等公表期間において、対策が実行できるよう迅速に体制を移行します。 市民に身近な立場から感染症の発生及びまん延の防止を図るために、他自治体への協力や感染状況等の情報提供、相談対応を行います。 【65ページ】 ⑥市民の果たすべき役割 市民は、感染症に関する正しい知識を持ち、その予防に必要な注意を払うとともに、差別や偏見をもって感染症の患者や医療関係者等の人権を損なわないよう努めます。 ⑦医師等の果たすべき役割 医師その他の医療関係者は、市民の果たすべき役割に加え、感染症の予防に関し、国、県及び本市の施策に協力するとともに、患者等に対する適切な説明を行います。また、その理解の下に良質かつ適切な医療を提供するよう努めます。 病院、診療所、検査機関及び社会福祉施設等の開設者及び管理者は、施設における感染症の発生予防やまん延防止のために必要な措置を講ずるよう努めます。 医療機関及び薬局は、感染症の入院患者の医療その他必要な医療の実施について、国、県及び本市が講ずる措置に協力するものとします。 特に公的医療機関等、地域医療支援病院及び特定機能病院は、新型インフルエンザ等感染症等発生等公表期間において、新興感染症に係る医療提供体制の確保に向けて迅速かつ的確な対応を実施するため、県知事が通知する事項について、必要な措置を講じます。 ⑧獣医師等の果たすべき役割 獣医師その他の獣医療関係者は、市民の果たすべき役割に加え、感染症の予防に関し、国、県及び本市の施策に協力するとともに、その予防に寄与するよう努めます。 動物等取扱業者は、市民の果たすべき役割に加え、自らが取り扱う動物及びその死体が感染症を人に感染させることがないように適切に管理し、感染症の予防に関する知識及び技術の習得、その他の必要な措置を講ずるよう努めます。 ⑨予防接種 予防接種は、感染予防、発病予防、重症化予防及び感染症のまん延防止等を担う重要なものです。 国が行うワクチンの有効性及び安全性の評価を踏まえ、ワクチンに関する正しい知識の普及を進め、市民の理解を得つつ、予防接種法に基づき、積極的に予防接種を推進していきます。 【66ページ】 2、具体的な施策 (1)発生の予防 ①施策に関する考え方 感染症対策について 発生の予防のための対策においては、具体的な感染症対策を企画、立案、実施及び評価していくことが重要です。 感染症の発生を予防するための日常的な対策については、感染症発生動向調査を中心として実施します。 平時における食品衛生対策、環境衛生対策、動物由来感染症対策及び感染症の国内への侵入防止対策については、関係機関及び関係団体との連携を図りながら適切に措置を講じます。 感染症の予防を効果的かつ効率的に進めていくため、病院、診療所、社会福祉施設、学校、企業等の関係機関及び関係団体等と対策協議会等を通じて連携します。 予防接種について 予防接種による予防が可能であり、かつ、ワクチンの有効性及び安全性が確認されている感染症については、予防接種法に基づき適切に予防接種が行われることが重要です。 予防接種法に基づく定期予防接種の実施に当たり、医師会等と十分な連携を図り、地域の実情に応じた個別接種の推進等、対象者が予防接種をより安心して受けられるよう実施体制を整備し、積極的に情報を提供します。 ②感染症発生動向調査 体制整備について 感染症発生動向調査は、感染症の有効かつ的確な予防、診断、治療に係る対策を図り、多様な感染症の発生及びまん延を防止するための最も基本的な施策です。 医師会等の協力を得ながら、感染症法第12条に基づく医師の届出の義務について周知を図り、病原体の提出を求めるとともに発生動向の適切な把握を行います。 適切な届出について 感染症法に基づき、健康診断等の措置及び患者に対する良質かつ適切な医療の提供や病原体に汚染された場合の消毒、ねずみ族の駆除等の措置が迅速かつ適切に行われる必要があることから、医師は感染症法第12条に規定する本市への届出を適切に行うよう努めます。 動物等の感染症への対応について 感染症法第13条の規定による獣医師からの届出を受けた場合、当該届出に係る動物又はその死体が感染症を人に感染させることを防止するため、保健所、衛生研究所及び動物管理部門等が相互に連携しながら、速やかに積極的疫学調査の実施その他必要な措置を講ずるよう努めます。 【67ページ】 病原体情報等の収集及び提供について 感染症の病原体を迅速かつ正確に特定するため、医療機関等の協力の下、衛生研究所等を中心に、病原体に関する情報を統一的に収集、分析及び提供する体制を整備します。また、感染症情報センター等を中心に、患者に関する情報の収集及び分析を行い、感染症発生動向調査体制の強化に努めます。 国立感染症研究所をはじめ、関係機関から感染症情報を収集し、迅速に医療機関、保健所及び市民等に情報提供します。 ③予防対策と食品衛生対策の連携 食品媒介感染症の予防のため、食品衛生部門による他の食中毒対策と併せて、食品の検査、監視を要する業種や給食施設への発生予防の指導を行います。 発生予防に必要な情報の提供や指導は、感染症対策部門と食品衛生部門が連携して行います。 ④予防対策と環境衛生対策の連携 水や空調設備、ねずみ族及び昆虫等を介する感染症の発生及びまん延を防止するため、市民への駆除等に関する正しい知識の普及、情報提供や関係業種等への指導等を行います。ただし、過剰な消毒及び駆除とならないよう配慮します。 発生予防に必要な情報の提供や指導は、感染症対策部門と環境衛生部門が連携して行います。 ⑤検疫所との連携 検疫所と連携し、海外における感染症発生情報等を収集し、市民や医療機関等に情報提供します。 「検疫法」第18条第3項の規定に基づく健康状態に異状を生じた者に対し指示した事項等の通知を検疫所から受理した場合、保健所は、本人その他関係者に質問又は必要な調査を行います。 【68ページ】 (2)まん延の防止 ①施策に関する考え方 感染症予防の推進について 患者等の人権を尊重しつつ、迅速かつ的確にまん延防止対策を実施するためには、社会全体の感染症予防の推進が重要です。 感染症発生動向調査による情報の公表等を行い、患者等を含めた市民、医療関係者等の理解と協力に基づいて、市民が自ら予防に努め、健康を守ることができるよう支援します。 対人措置等における人権の尊重について 対人措置及び対物措置を行うに当たり、疫学調査等により収集した情報を適切に活用し、人権を尊重するとともに、その措置については必要最小限となるよう努めます。 関係機関及び関係団体との連携について 特定の地域での集団発生や広域的な発生の場合のまん延防止の観点から、医師会等の医療関係団体、社会福祉施設や教育機関等との連携体制の整備や情報共有に努めます。 臨時の予防接種について 予防接種法第6条に基づく指示があった場合、臨時の予防接種を適切に行います。 ②健康診断、検体採取等、就業制限及び入院勧告について 健康診断、検体採取等、就業制限及び入院措置を講ずるに当たっては、感染症の発生及びまん延に関する情報を対象となる患者等に提供し、その理解と協力を求めながら行うことを基本とするとともに、人権尊重の観点からその措置は必要最小限のものとします。また、審査請求に係る教示等の手続及び感染症法第20条第6項に基づく患者等に対する意見を述べる機会の付与を厳正に行います。 健康診断の勧告等について 健康診断の勧告等の対象は、病原体の感染経路その他の事情を十分に考慮した上で、科学的に当該感染症にかかっていると疑うに足りる正当な理由のある者とします。 感染症法に基づく健康診断の勧告等以外にも、的確に情報の公表を行い、市民が自発的に健康診断を受けるよう勧奨する場合もあります。 検体の採取等について 検体の採取等の勧告、措置は、感染症法に基づき、感染症にかかっていると疑うに足りる正当な理由のある者を対象に、まん延防止のため必要があると認められる場合に実施します。 就業制限について 保健所は、就業制限に当たり、対象者その他の関係者に対し、対象者の自覚に基づく自発的な休暇、就業制限の対象以外の業務に一時的に従事すること等の対応が図られるよう周知します。 入院勧告の手続等 入院勧告を行うに際し、患者等に対し、入院の理由、退院請求及び審査請求に関すること等、入院勧告の通知に記載する事項を含め十分な説明を行うとともに、講じた措置の内容、提供された医療の内容及び患者の病状等について記録票を作成します。 【69ページ】 入院中の苦情の申出等について 入院勧告等に係る入院においては、医師から患者等に対する十分な説明及び患者の同意に基づいた医療の提供を行います。 入院後も、感染症法第24条の2に基づく処遇についての苦情の申出を受けた場合には、適切に対応するとともに、十分な説明及び相談を通じて、患者等の精神的不安の軽減を図ります。 退院請求への対応について 入院勧告等に係る患者等が感染症法第22条第3項に基づく退院請求を行った場合には、当該患者が病原体を保有しているかの確認を速やかに行った上で必要な措置を講じます。 ③積極的疫学調査について 積極的疫学調査の実施について 感染症又は感染症の疑いが濃厚な患者が発生した場合や、集団発生等、通常の発生動向と異なる傾向が認められた場合には、感染症法に基づき積極的疫学調査を的確に実施します。 調査に当たっては、保健所、衛生研究所及び動物管理部門等が密接な連携を図ることにより、地域における詳細な流行状況の把握や感染源及び感染経路の究明を迅速に進めます。 対象者には調査の趣旨をよく説明し、理解を得ることに努めます。また、指示、罰則の対象となる類型の患者等が正当な理由なく応じない場合には、人権に配慮しつつ、丁寧に説明するよう努めます。 協力要請及び支援について 必要に応じて国立感染症研究所、国立研究開発法人国立国際医療研究センター及び他の地方衛生研究所等に協力を求め、積極的疫学調査を実施するとともに、協力の求めがあった場合には必要な支援を積極的に行います。 緊急時の対応について 国による積極的疫学調査が実施される場合には、国及び県と連携を図るとともに必要な情報の収集及び提供を行います。 ④感染症診査協議会 感染症法第20条第1項の規定による入院勧告、同条第4項の規定による入院期間の延長等に当たり、横浜市感染症診査協議会条例に基づく横浜市感染症診査協議会の意見を聴き、その結果を踏まえ適切に対応します。 同協議会は、感染症のまん延防止の観点から、感染症に関する専門的な判断を行います。 同協議会の委員の任命に当たっては、患者等への医療及び人権尊重の視点も必要であるという趣旨を十分に考慮します。 【70ページ】 ⑤消毒その他の措置 必要に応じ、以下の措置を講ずるに当たり可能な限り関係者の理解を得るとともに、個人の権利に配慮しつつ必要最小限の対応を図るものとします。 消毒、ねずみ族及び昆虫等の駆除、物件に対する措置 建物への立入制限又は封鎖、交通の制限及び遮断等の措置 ⑥指定感染症への対応 政令により指定感染症として対応することが定められた感染症と疑われる症例が医師から報告された場合には、法的な措置に基づき適切な対応に努めます。 ⑦新感染症への対応 新感染症は、感染力やり患した場合の重篤性が極めて高い一類感染症と同様の危険性を有する一方、病原体が不明という特徴を有するものです。 新感染症が疑われる症例が医師から報告された場合には、本市は、国からの指導、助言に基づき適切な対応に努めます。 ⑧まん延防止対策と食品衛生対策の連携 原因の究明 食品媒介感染症が疑われる疾患が発生した場合には、保健所長の指揮の下、食品衛生部門、検査部門及び感染症対策部門が相互に連携を図りながら迅速な原因究明に取り組みます。 原因となった食品等の究明に当たり、必要に応じ衛生研究所等や国立試験研究機関等との連携を図ります。 感染防止対策について 病原体、原因食品、感染経路等が判明した場合、食品衛生部門においては、一次感染を防止するため、原因物質に汚染された食品等の販売禁止や営業停止等の行政処分を行うとともに、感染症対策部門においては、必要に応じ消毒等を実施します。 感染症対策部門と食品衛生部門が連携し、情報提供等の必要な措置をとることにより、二次感染によるまん延防止を図ります。 ⑨まん延防止対策と環境衛生対策の連携 水や空調設備、ねずみ族及び昆虫等を介した感染症のまん延防止のための対策を講ずるに当たって、環境衛生部門と感染症対策部門が連携して原因究明や消毒等を実施します。 ⑩情報の公表 感染症の発生状況や医学的知見など、市民が感染予防対策を講じる上で有益な情報について、混乱を招かないように配慮しつつ、可能な限り提供に努めます。 平時から報道機関と信頼関係の確立に努めるとともに、患者等の人権を尊重し、誤った情報や不適当な報道がなされないよう、的確な情報提供に努めます。 【71ページ】 (3)情報の収集、調査及び研究 ①施策に関する考え方 感染症対策は、科学的な知見に基づいて推進されるべきものであることから、調査及び研究を積極的に推進するよう努めます。 ②感染症及び病原体等に関する調査及び研究 保健所は、地域における感染症対策の中核的機関として、国等が整備する情報基盤も活用しながら、疫学的な調査及び研究を衛生研究所等との連携の下に進めます。 衛生研究所は、感染症及び病原体等の技術的かつ専門的な機関として、感染症及び病原体等の調査、研究、試験検査並びに情報等の収集、分析及び公表を行います。また、その実施に当たっては国立感染症研究所や他の地方衛生研究所等、検疫所、県、本市の関係部門及び保健所と連携します。 本市における調査及び研究については、地域の環境や感染症の特性等に応じた取組が重要であり、その取組に当たっては、疫学的な知識及び感染症対策の経験を有する職員の活用に努めます。 厚生労働省令で定める感染症指定医療機関は、新興感染症の対応を行い、知見の収集及び分析を行います。 感染症の発生届及び積極的疫学調査に関する情報を迅速かつ効率的に収集するため、医師が届出等を行う場合には、電磁的方法によることが必要です。また、新型インフルエンザ等感染症の患者又は新感染症の所見がある者が入院、退院又は死亡した場合も、電磁的方法で報告することが求められます。 【72ページ】 (4)検査体制、能力 ①施策に関する考え 衛生研究所における病原体等の検査体制の充実を図るとともに、医療機関及び民間の検査機関等における検査に対し、必要に応じ技術支援及び精度管理等を実施します。 新興感染症のまん延が想定される感染症が発生した際に、検査が流行初期の段階から円滑に実施されるよう、対策協議会等を活用し、関係者や関係機関と協議の上、平時から計画的な準備を行います。また、民間の検査機関等との連携を推進します。 ②病原体等の検査 広域にわたる又は大規模な感染症の発生、まん延を想定し、衛生研究所や保健所における病原体等の検査に係る役割分担を明確にした上で連携を図ります。 検査体制を速やかに整備できるよう、検査体制の確保を行う県等と平時から運用方法や費用負担の在り方等について対策協議会等を活用し、協議を行います。 衛生研究所が十分な試験検査機能を発揮できるよう、計画的な人員の確保や配置等、平時から検査体制の整備を行います。 衛生研究所は、新興感染症等の発生初期において検査を担うことを想定し、以下の取組を行います。 国立感染症研究所との情報交換を密にするとともに、平時からの研修や実践的な訓練の実施、検査機器等の設備の整備及び検査試薬等の物品の確保等を通じ、自らの試験検査機能の向上に努めます。 地域の検査機関の資質の向上と精度管理に向けて、必要に応じ情報の収集、提供及び技術的支援を行います。 国立感染症研究所の検査手法を活用して検査実務を行うほか、保健所や他の地方衛生研究所等と連携して、迅速かつ適確に検査を実施します。 国立感染症研究所等と連携して、新興感染症の病原体等について迅速な検出が可能となるよう、人材の養成及び必要な資器材の整備を行います。 ③総合的な病原体等の検査情報の収集、分析及び公表のための体制の構築 感染症のまん延防止等のため、患者情報と病原体情報を迅速かつ総合的に分析し、公表できるように体制を整備します。 【73ページ】 (5)医療提供体制 ①施策に関する考え方 新興感染症等が発生した際に速やかに対応するため、県と市内医療機関が協定締結等を行い、外来診療、入院、自宅療養者等への医療提供体制を整備しています。また、対策協議会等を通じて関係者や関係機関と協議の上、連携が図られるよう調整する必要があります。 感染症指定医療機関及び協定指定医療機関においては、感染症のまん延防止のために必要な措置を講じた上で、人権に配慮しつつ通常の医療と同等の療養環境において医療が提供できるよう努めます。 ②医療提供体制 病床等の確保のため、感染症指定医療機関や医師会、歯科医師会、薬剤師会、看護協会等の医療関係団体等と緊密に連携します。 医療機関に対し、感染症に関する情報を積極的に提供します。 (6)患者の移送 ①施策に関する考え方 入院を勧告した患者又は入院させた患者の医療機関への移送体制の確保に当たっては、保健所のみでは対応が困難な場合において、県や本市組織内における役割分担や連携、民間事業者等への業務委託等を図ります。 ②移送体制の確保 患者発生時に保健所所有の移送専用車両等で円滑な移送が行われるよう、平時から消防部門等と連携し、情報を共有する枠組みや役割分担、人員体制の整備を図るよう努めます。 措置勧告による入院及び転院をする患者等の発生に備え、平時から、関係者を含めた移送訓練や演習等を定期的に実施します。 ③関係機関との連携 消防部門が傷病者を搬送した後、当該傷病者が、感染症法第12条第1項第1号等に規定する患者等であると医療機関が判断した場合には、医療機関から消防部門に対して、当該感染症等に関し適切に情報等を提供します。 【74ページ】 (7)体制の確保 ①施策に関する考え方 本計画の策定に当たっては、感染症法に定める新興感染症を基本とした体制を確保します。国内外の最新の知見を踏まえつつ、まずはこれまでの対応の教訓を生かすことができる新型コロナウイルス感染症への対応を念頭に取り組みます。 実際に発生及びまん延した感染症が、「事前の想定とは大きく異なる事態」であると国が判断した場合は、その感染症の特性に合わせて対策を見直すなど、実際の状況に応じた機動的な対応を行います。 ②項目の設定と検証 国が策定するガイドラインや県予防計画等を参考に、検査体制、能力、人材の養成、資質の向上及び保健所の体制の項目について定めます。 本計画に基づく取組状況を対策協議会に毎年報告し、進捗確認を行うことで、関係者が一体となって、平時から感染症の発生及びまん延を防止していくための取組の実施状況を検証します。 有用な情報を共有することで連携の緊密化を図り、PDCAサイクルに基づく改善を図ります。 【75ページ】 (8)宿泊施設 ①施策に関する考え方 新興感染症が発生した場合には、重症者を優先する医療体制へ移行することも想定されます。 自宅療養者等の家庭内感染や医療体制のひっ迫を防ぐ等の観点から、新興感染症の特性や、感染力その他当該感染症の発生及びまん延の状況を考慮しつつ、宿泊施設の体制を整備できるよう、平時から計画的な準備を行うことが重要です。 ②宿泊施設の確保 宿泊施設の確保、運営等について、県と協議を進めます。 (9)外出自粛対象者の療養生活の環境整備 ①施策に関する考え方 外出自粛対象者については、体調悪化時等に適切な医療につなげることができる健康観察の体制を整備することが重要です。また、外出自粛により生活上必要な物品等の物資の入手が困難になることが想定されるため、当該対象者について生活上の支援を行うことが重要です。 デジタルツールを積極的に活用しながら、健康観察等を効率的に行うことが重要です。 外出自粛対象者が社会福祉施設等で過ごす場合は、施設内で感染がまん延しないような環境を構築することが求められます。 ②療養生活の環境整備 医療機関、医師会、薬剤師会及び看護協会等の協力や、必要に応じ民間事業者への委託等を活用し、療養生活の環境整備を行います。その際、介護サービス事業者や障害福祉サービス事業者等とも連携します。 外出自粛対象者の健康観察等や診療、医薬品、生活必需品等の支給等については、平時から対策協議会等を活用し、関係者とあらかじめ役割分担、費用負担の在り方等について協議します。 社会福祉施設等において、医療機関と連携し、必要に応じてゾーニング等の感染対策の助言を行うことができる体制を平時から確保しておき、施設内における感染のまん延を防止します。 【76ページ】 (10)対策物資等 ①施策に関する考え方 医薬品や個人防護具等の感染症対策物資等は、感染症の予防及び感染症の患者に対する診療において欠かせないものです。 特に新型インフルエンザ等感染症等の全国的かつ急速なまん延が想定される感染症が発生した際には、感染症対策物資等の急速な利用が見込まれるため、平時から不足しないよう対策することが重要です。 ②対策物資の確保と供給 新型インフルエンザ等感染症等のまん延に備え、医療機関への備蓄の依頼や薬剤師会との協定締結等により、医薬品の供給や個人防護具等の備蓄を行います。 (11)啓発及び人権の尊重 ①施策に関する考え方 感染症に関する適切な情報の公表、正しい知識の普及に努めるとともに、まん延防止のための措置を行うに当たり、人権を尊重し、感染症の患者や医療関係者等及び医療機関や社会福祉施設等が、差別や風評被害を受けることがないよう適切な対応を行います。 医師等は、患者等への十分な説明と同意に基づいた医療の提供に努めます。 市民は、感染症についての正しい知識を習得し、自ら感染症を予防するとともに、患者等が差別を受けることがないよう配慮に努めます。 ②啓発及び人権の尊重 診療、就学、交通機関の利用等の場面において、正しい知識の普及啓発や、患者や医療関係者等及び医療機関や社会福祉施設等への差別、偏見の排除のため、必要な広報の実施に努めます。特に保健所は、感染症についての情報提供、相談等のリスクコミュニケーションを行います。 患者情報の流出防止のため、個人情報の取扱いについては基準を定めて厳重に管理します。 医師が感染症患者に関する届出を行った場合には、個人情報保護に配慮しつつ、状況に応じて、患者等へ当該届出の事実等を通知するように徹底を図ります。 報道担当部門を通じて、平時に報道機関とあらかじめ調整した基準により、的確に情報を提供します。また、誤った情報や不適当な報道がなされたときには、速やかにその訂正がなされるように、報道機関との連携を図ります。 【77ページ】 (12)人材の養成及び資質の向上 ①施策に関する考え方 感染症に関する幅広い知識や研究成果の医療現場への普及等の役割を担うことができる、以下のような多様な人材の養成を行うことが重要です。 新たな感染症対策に対応できる知見を有する、医療現場で患者の治療に当たる感染症の医療専門職 社会福祉施設等でクラスターが発生した場合に、適切な感染拡大防止対策を行うための感染管理の専門家 感染症の疫学情報を分析する専門家 行政の中において感染症対策の政策立案を担う人材 ②人材の養成及び資質の向上 保健所及び衛生研究所等の職員等の資質の向上、維持のため、国立保健医療科学院及び国立感染症研究所等で行う感染症に関する研修等に職員を積極的に派遣します。 国立機関との人事交流を行い、感染症に関する知識を習得した者については、保健所及び衛生研究所等における活用等を図ります。 発生時における即応体制確保のため、定期的に関係機関等と患者移送、受入等の訓練を行うとともに、専門職だけでなく広く職員向けの研修及び訓練を実施します。 アイヒート要員の確保や研修、連絡体制の整備及びその所属機関との連携の強化等を通じて、アイヒート要員による支援体制を確保します。 平時から実践的な訓練の実施等、アイヒート要員の活用を想定した準備を行います。 ③医療機関及び医師会等の方策 第一種協定指定医療機関及び第二種協定指定医療機関を含む感染症指定医療機関は、新興感染症の発生を想定し、他の医療機関等に派遣することも視野に入れ、勤務する医師及び看護師等の資質向上のための研修等を実施します。 医師会等の医療関係団体は、会員等に対して感染症に関する情報提供及び研修の実施に努めます。 【78ページ】 (13)保健所の体制 ①施策に関する考え方 保健所は、地域の感染症対策の中核的機関として、地域保健法に基づき厚生労働大臣が策定する基本指針とも整合性をとりながら、必要な情報の収集、分析、適時適切な情報公開を行います。感染拡大時にも健康づくり等地域保健対策も継続実施できるよう関係機関等と連携します。 平時から、有事の際に速やかに体制を切り替えることができる仕組みを構築します。 対応策の企画立案、実施、リスクコミュニケーション等について、本市組織内の役割分担を明確化します。 感染症発生時に迅速に対応できるよう、1保健所18支所体制をとることで指揮命令系統を一元化し、責任者に対して感染症に関する情報を迅速かつ適切に伝達します。 健康危機発生時に備えて、保健所の平時からの計画的な体制整備を行います。 ②保健所の体制の確保 感染症のまん延が長期間継続することも考慮し、必要となる保健所の人員数を想定し、感染症発生時においてその体制に迅速に切り替えることができるようにします。 広域的なまん延防止の観点から、感染経路の特定、濃厚接触者の把握等の専門的業務を十分に実施するために、保健所における人員体制等を整備します。 必要な機器、機材の整備、物品の備蓄をはじめ、業務の一元化や外部委託、デジタルツールの活用等を通じた業務効率化を積極的に進めるとともに、外部人材や応援体制を含めた人員体制及び受入体制の構築(応援派遣要請のタイミングの想定も含む。)等を行い、本市組織内で共有します。 健康危機管理体制を確保するため、保健所に保健所長を補佐し、健康危機管理を担う人材育成を含めた総合的なマネジメントを行う統括保健師を配置します。 【79ページ】 (14)緊急時の施策 ①緊急時における施策 感染症の患者の発生予防又はまん延防止のために緊急を要すると認めるときは、医師その他の医療関係者に対し、県と協力して当該措置の実施に必要な協力を求め、迅速かつ的確な対策を講じます。 市民の生命及び身体を保護するために、緊急に国から職員の派遣、その他必要な協力の要請があった場合には、迅速かつ的確に対応するよう努めます。 新感染症の患者の発生や生物兵器を用いたテロリストによる攻撃が想定される場合など、本市に十分な知見が蓄積されていない場合には、国から職員や専門家の派遣等必要な支援を受けます。 ②緊急時における国や県との連絡体制 感染症法第12条に規定する国への報告等を県を通じて確実に行うとともに、特に新感染症への対応を行う場合や、その他感染症についての緊急対応が必要と認める場合には、迅速かつ確実な方法により、国や県との緊密な連携を図るよう努めます。 検疫所から一類感染症等の患者等を発見した旨の情報提供を受けた場合は、検疫所と連携し、同行者等の追跡調査その他必要と認める措置を行います。 緊急時においては、国や県から対策を講じる上で有益な情報の提供を受けるとともに、国や県に対しては地域における患者の発生状況等の情報共有に努めます。 県と緊密な連絡を保ち、感染症の発生状況や緊急度等を勘案し、必要に応じて相互に職員及び専門家の派遣等を行います。 複数の自治体にわたり感染症が発生した場合であって緊急を要するときは、県が提示する県内の統一的な対応方針等に基づき、感染の拡大防止に努めます。 ③緊急時における情報提供 緊急時においては、国の情報に基づいて感染症の患者の発生状況や医学的知見など市民が感染予防等の対策を講じる上で有益な情報を、パニック防止と人権尊重の観点を考慮しつつ、可能な限り市民に提供します。この場合には、情報提供媒体を複数設定し、理解しやすい内容で情報提供を行います。 【80ページ】 (15)その他重要事項 ①施設内感染の防止 医療機関、社会福祉施設等において感染症の発生やまん延を防止するため、最新の医学的知見を踏まえた施設内感染に関する情報を適切に提供します。 医療機関における院内感染防止措置に関する情報を収集し、他の医療機関に提供します。また、施設内感染に関する情報や研究の成果及び講習会、研修に関する情報を、医師会等の関係団体等の協力を得て、病院、診療所、社会福祉施設等の現場の関係者に普及し、活用を促します。 これらの施設の開設者又は管理者は、提供された情報に基づき、必要な措置を講じ、医療機関においては院内感染対策委員会等を設置するなど院内感染の防止に努めます。また、平時から施設内の患者、利用者及び職員の健康管理を行い、感染症の早期発見に努めます。 ②災害防疫 災害発生時の感染症の発生予防及びまん延防止の措置は、生活環境が悪化し、被災者の病原体に対する抵抗力が低下する等の悪条件下に行われます。そのため、災害発生時において、横浜市防災計画等に基づき迅速かつ的確に所要の措置を講じ、感染症の発生及びまん延の防止に努めるとともに、保健衛生活動等を迅速に実施します。 ③動物由来感染症対策 届出の周知等について 動物由来感染症に対する必要な措置等が速やかに行えるよう、獣医師等に対し、感染症法第13条に規定する届出や狂犬病予防法に規定する届出の義務について周知を行います。 ワンヘルス、アプローチに基づき、関係機関及び医師会、獣医師会などの関係団体等と情報交換を行うこと等により連携を図り、市民への情報提供を行います。 情報収集体制の構築について 獣医師会、獣医学科を設置する大学、動物飼育施設、畜産関係者及び医療機関等の協力を得て、動物由来感染症に関する幅広い情報を収集するための体制を構築します。 情報提供について ペット等の動物を飼育する市民が動物由来感染症に関する正しい知識を持ち、その予防に必要な注意を払えるよう適切な情報の提供に努めます。 病原体保有状況調査体制の構築について 積極的疫学調査の一環として動物の病原体保有状況調査により、広く情報を収集することが重要であるため、保健所、衛生研究所及び動物管理部門等が連携を図りながら調査に必要な体制構築に努めます。 感染症対策部門と動物管理部門の連携について 動物由来感染症の予防及びまん延防止の対策については、感染症の病原体を媒介するおそれのある動物への対策や、動物等取扱業者への指導、獣医師会との連携及び市民に対する正しい知識の普及等が必要であることから、感染症対策部門と動物管理部門が適切に連携して対策を講ずるよう努めます。 ④外国人への情報提供 感染症法は、市内に居住又は滞在する外国人についても一般市民と同様に適用されるため、感染症対策を外国語で説明した広報を行う等、外国人への情報提供に努めます。 ⑤薬剤耐性対策 医療機関において、薬剤耐性の対策及び抗菌薬の適正使用が行われるよう、適切な方策を講じます。 【82ページ】 3、特定の感染症対策 (1)結核対策 現状と課題 本市の結核り患率は減少傾向にあり、2022年のり患率(7.6)は全国平均(8.2)より低いものの、各区のり患率、患者登録者数に差が認められます。 新登録患者の半数以上が70歳以上の高齢者である一方、20~30代では外国出生者の占める割合が増加傾向です。結核患者の高齢化や留学、就労目的の入国者に対応した結核対策が課題となっています。 施策の方向性 結核の予防及びまん延の防止のため、健康診断と結核患者への適切な医療の提供、患者管理、支援を行うとともに、市民への知識の普及啓発をより効果的、総合的に推進します。 目標値の達成状況、結核の発生動向状況等の定期的な検証及び評価を踏まえ、結核対策の取組を充実させます。 【83ページ】 (2)HIV、エイズ、性感染症対策 現状と課題 2022年に新たに本市に報告されたHIV、エイズ患者は16件で、2021年と比較し減少しましたが、診断時にエイズを発症している割合は31.3%と変わらず推移しています。 2022年に本市に報告された梅毒患者は196件で、最多の報告数となりました。梅毒等の性感染症は母子感染や妊娠中の合併症を引き起こす危険因子となる場合があり、性感染症の予防と早期発見、早期治療のための普及啓発が求められています。 施策の方向性 HIV、エイズ、性感染症に関する正しい知識の普及啓発について関係機関と連携しながら、検査、相談体制を充実させ、感染の予防及びまん延防止を図ります。 HIV、エイズ患者等に対する人権を尊重した良質かつ適切な医療の提供を推進します。 (3)感染症、食中毒対策 現状と課題 平時から感染症の発生状況について市内及び全国の情報を収集、分析しています。適切な予防対策の推進を図るため市民や医療機関等に効果的な情報提供、啓発を実施する必要があります。 感染症、食中毒発生時には拡大、まん延防止のため迅速かつ的確に対応することが求められています。 施策の方向性 1保健所18支所において、感染症や食中毒発生情報の正確な把握、分析、速やかな情報提供及び状況に応じた的確な対応を行います。 医療機関や関係団体等との連携により、感染症、食中毒の予防及びまん延防止を図ります。 【85ページ】 (4)輸入感染症対策 現状と課題 海外への渡航者や海外からの入国者の増加に伴い、輸入感染症の発生や感染拡大が予測されます。新興、再興感染症を含めた輸入感染症の予防啓発及び発生時の早期対応を着実に進めていく必要があります。 施策の方向性 海外渡航者向けに市民、医療機関、関係団体等に時機を捉えて啓発を行います。 輸入感染症発生の情報提供及び状況に応じた的確な対応や医療機関等との連携を行います。 【86ページ】 (5)新型インフルエンザ対策 現状と課題 医療機関等との連携強化を目的とした連絡会及びシミュレーション訓練について、新型コロナウイルス感染症対応の経験を踏まえて再構築する必要があります。 備蓄計画を見直し、個人防護具や抗インフルエンザウイルス薬の適正な数の確保が必要です。 施策の方向性 新型コロナウイルス感染症対応の経験を生かした感染拡大防止計画、訓練の整備や個人防護具、抗インフルエンザウイルス薬等の備蓄を計画的に行います。 横浜市新型インフルエンザ等対策行動計画に基づき、関係機関と連携し、新型インフルエンザ対策を推進します。 【87ページ】 (6)麻しん、風しん対策 現状と課題 麻しんは2015年に排除認定されたものの、海外での感染者を契機とした国内での感染拡大の報告があります。風しんは2018年~2019年に全国的な流行を認め、それに一致して先天性風しん症候群の報告がありました。 麻しん排除の継続と風しんの排除のためには、麻しん風しん混合ワクチンの高い接種率を維持する必要があります。しかし、2022年の麻しん風しん混合ワクチン2期の接種率は89%まで低下しており、接種率向上に向けた対策が重要です。 施策の方向性 麻しん、風しんに関する正しい知識の広報、啓発や医療機関等の関係機関と連携した接種勧奨等を実施し、接種率の向上を図ることにより麻しん排除達成の継続と風しん排除に向けた対策を図ります。 【88ページ】 (7)予防接種 現状と課題 定期予防接種の高い接種率を維持するため、予防接種の重要性や接種漏れが生じやすいワクチンについて広報、案内などを行う必要があります。 直近10年間で新たに8つのワクチンが定期接種化され、制度が複雑化しており、協力医療機関における予防接種事故の増加につながっています。継続的に安全、適切な接種が実施されるよう、医療機関に向けた研修等、事故防止の取組が必要です。 施策の方向性 市民への予防接種の正しい知識の提供と接種機会を確保します。関係機関等と連携して安全、適切な接種と副反応や予防接種事故に対する相談体制を構築します。 【89ページ】 6章2、難病対策 現状と課題 難病患者やその家族は、治療できる専門医や医療機関が少なく、必要な情報を取得するのが困難な状況にあります。そのため、難病患者および家族の状態に合わせた方法で、疾患についての学びや当事者間での情報交換の機会をつくり、治療と仕事の両立等社会参加を支援する必要があります。 医療機器の進化により、常時医療的なケアを要する難病患者が在宅で療養生活を送る機会が増えています。このため、在宅での医療、介護支援や介護者の定期的な休養の機会の確保がより一層求められています。 難病の希少性、多様性から、ケアマネジャーなど支援者の理解が不十分な状況があります。このため、支援に関わる多職種に対する研修や事例検討などにより支援者の質の向上をしていく必要があります。 施策の方向性 難病を患っても、住み慣れた地域において安定した療養生活が送れ、それぞれに合った社会参加ができるよう、難病患者や家族が、適切な時期に、療養や社会生活の両立に関する知識等を得ることができる環境を整えます。 難病患者の療養を支えるため、地域の実情に応じた支援ネットワークが広がるよう、福祉、保健、医療人材の資質の向上に取り組みます。 【90ページ】 6章3、アレルギー疾患対策 現状と課題 アレルギー疾患患者に対する診療、管理ガイドラインに則った医療の更なる普及を目指して2023年度に神奈川県アレルギー疾患対策推進計画が改訂され、計画の趣旨を踏まえた施策の推進が求められています。 神奈川県アレルギー疾患医療拠点病院として指定されている横浜市立みなと赤十字病院については、引き続き、拠点病院として役割を発揮することが求められています。高度で良質な専門医療の提供に加え、専門的な知識及び技能を有する医師や医療従事者の育成、啓発など、横浜市全体のアレルギー医療の向上に努めます。 アレルギー疾患対策には多様なアプローチ方法があり、給食等における食材の除去、アナフィラキシーショックへの対処、皮膚疾患へのケアなど、関連する分野が多岐に渡ることから、様々な情報を一元的に把握できるようにする必要があります。 アレルギー疾患は、食物やほこりなどの様々な要因により免疫が過剰に反応することが原因で発症し、食物アレルギーやアトピー性皮膚炎、気管支ぜん息など多岐にわたります。対象となる年齢幅も広いことから、学校現場の職員、給食提供に関わる職員、施設医療スタッフなどに対し、切れ目のない人材育成が必要です。 施策の方向性 市民が安全、安心に日常生活を送ることができるよう、アレルギー疾患に対する正しい知識を得る機会を提供するとともに、専門医療機関による相談体制の確保や人材育成に取り組みます。 学校、保育、施設等の利用者が、安心して学校生活、施設生活等を送ることができるよう、職員が適切なアレルギー対策を実施します。 【91ページ】 6章4、認知症疾患対策 現状と課題 認知症疾患医療センターの地域連携拠点機能の推進においては、引き続き、情報共有、事例共有を行い、自己評価や外部評価を踏まえた地域連携会議等の内容の充実が必要です。また、医療従事者等の認知症対応力向上研修についても、引き続き実施します。 認知症予防や早期発見、早期対応に向けて、引き続き、支援者や地域に対して、認知症予防やMCIの理解促進のための啓発が必要です。 若年性認知症の人や家族への支援において、産業保健分野、障害分野、医療機関等との連携が課題であり、各所管課等と連携して周知を進める必要があります。また、企業への周知啓発が必要です。 施策の方向性 認知症の人やその家族が地域の中で自分らしく暮らし続けることができるよう、認知症に関する正しい知識の普及を進め、認知症への社会の理解を深めます。 認知症の人やその家族、周囲が認知症に気付き、早期に適切な医療や介護につなげることにより、本人や家族がこれからの生活に備えることができる環境を整えます。また、医療従事者や介護従事者等の認知症への対応力の向上を図ります。 様々な課題を抱えていても、一人ひとりが尊重され、本人に合った形での社会参加が可能となる地域共生社会の実現に向けた取組を進めます。また、若年性認知症の人やその家族が相談でき、支援を受けられる体制を更に推進します。 【92ページ】 6章5、医療的ケア児者等及び障害児者への対応 現状と課題 増加する医療的ケア児者等に適切な医療を提供することとあわせ、医療的ケア児者とその家族の生活実態やニーズを把握した上で、福祉、保健、医療、教育、保育等の連携を更に強化し、支援の充実に取り組む必要があります。 常に医療的ケアが必要な重症心身障害児者等やその家族の地域での暮らしを支援するため、相談支援、生活介護、訪問介護サービス及び短期入所などを一体的に提供できる多機能型拠点の整備を引き続き進めていく必要があります。 障害児者が身近な地域で適切な医療、看護を受けられる環境づくりを推進するため、障害特性等を理解し適切な医療を提供できる医療機関及び医療従事者を増やす必要があります。 精神障害のある人が、安心して自分らしい暮らしを実現するため、入院から地域への移行や地域定着に向けた支援等を推進し、地域での生活を支える仕組みを充実させていくことが必要です。 心身障害児者歯科診療協力医療機関において、障害児者の歯科に係る相談や治療に取り組んでいます。 横浜市歯科保健医療センターにおいて、一般の歯科診療所では対応が困難な障害児者に対して、疾患、障害、個人の特性に配慮したうえで、日帰り全身麻酔、精神鎮静法、モニタリングなど全身管理下の歯科治療を実施しています。 一般の歯科医院では対応が困難な障害児者や、通院が困難な障害児者がかかりつけ歯科医をもてるよう、障害児者の歯科保健医療の充実を図っていく必要があります。 高次脳機能障害に対する一層の周知と18区に設置された中途障害者地域活動センターにおける相談支援の充実が必要です。 近年、軽度の知的な遅れを伴う、あるいは知的な遅れを伴わない発達障害の子どもは増加しています。また、個々のニーズは多様化しており、それに適した療育を受けられるよう体制を強化する必要があります。 頻発する風水害や大規模地震などを踏まえ、災害時の適切な医療体制を整えるとともに、自力避難が困難な災害時要援護者について、自助、共助の観点から支援する必要があります。 【93ページ】 施策の方向性 横浜型医療的ケア児者等コーディネーターをはじめ、福祉、保健、医療、教育、保育等の関係者が連携し、心身の状況や家族状況の変化、ライフステージに応じた切れ目のない支援体制を構築し、地域での受入れ態勢の更なる充実を図ります。 医療的ケア児者等とその家族が身近な地域で相談できる場所を整備し、医療的ケア児者等の相談体制の充実を図ります。 受診が必要になったとき、障害児者やその家族が、他の患者に気兼ねすることなく、医療機関を受診しやすい環境を整えます。 障害児者の歯科診療の需要や応需体制等の実態を調査し、その結果を踏まえて、障害児者の歯科保健医療の推進に取り組みます。 発達障害児の増加や個々のニーズの多様化を踏まえ、療育の中核機関である地域療育センターにおいて、利用申込後の初期支援や保育所等への支援、集団療育等の充実を図ります。 【94ページ】 6章6、歯科口腔保健、歯科医療 施策の方向性 口腔の健康は全身の健康にもつながることから、生涯を通じた歯科口腔保健の推進、医科歯科連携による口腔機能管理などを通じ、歯科口腔保健、歯科医療の充実を図ります。 障害児者の歯科診療の需要や応需体制等の実態を調査し、その結果を踏まえて、障害児者の歯科保健医療の推進に取り組みます。 【95ページ】 歯科医療の推進 現状と課題 歯科保健医療センターについて 地域の歯科医院休診時における歯科診療体制を維持するため、休日、夜間の歯科診療を提供しています。 高齢者や障害児者が在宅や施設で歯科診療が受けられるようにするため訪問歯科診療を実施しています。 一般の歯科診療所では対応が困難な障害児者に対して、疾患、障害、個人の特性に配慮したうえで、日帰り全身麻酔、精神鎮静法、モニタリングなど全身管理下の歯科治療を実施しています。 障害児者の歯科診療について 心身障害児者歯科診療協力医療機関において、障害児者の歯科に係る相談や治療に取り組んでいます。 周術期における口腔ケア 手術前後の口腔ケアが誤嚥性肺炎の予防や入院日数の短縮など手術後の回復に好影響を与えるという研究結果が明らかになっています。 高度専門医療の提供、研究、教育機関である横浜市立大学、地域の歯科医療を担う横浜市歯科医師会、本市の3者で周術期口腔機能管理の推進に向けた包括連携に関する協定を締結し、周術期口腔ケアの推進に取り組んでいます。 多職種連携 糖尿病、嚥下機能障害、心疾患及び緩和ケアなど高齢期に多い疾患、課題に関する研修や事例検討等を通じて更なる在宅ケアの質の向上とケアチームの連携強化を図り、疾病の重症化や介護の重度化を予防します。 【96ページ】 6章7、健康横浜21の推進、生活習慣病予防の推進 施策の方向性 横浜市では、市民の最も大きな健康課題の一つである生活習慣病の予防を中心とした、総合的な健康づくりの指針として、第3期健康横浜21を策定し、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間を延ばす健康寿命の延伸に取り組んでいます。 乳幼児期から高齢期まで継続した生活習慣の改善、生活習慣病の発症予防や重症化予防、健康に望ましい行動を取りやすくする環境づくりに、市民、関係機関、団体、行政が共に取り組むことにより、誰もが健やかな生活を送ることができる都市を目指します。 健康横浜21と連携した生活習慣病予防を推進していきます。