【表紙】 横浜市地域公共交通計画 (誰もがいきいきと安心して暮らせる街の実現に向けて) 令和7年4月 横浜市 【はじめに】 はじめに (誰もがいきいきと安心して暮らせる街の実現に向けて) ・地域公共交通は、私たちの生活に必要不可欠な移動手段であるだけでなく、外出を促し、地域コミュニティの活性化や健康増進など、多面的な効果をもたらす大切な生活インフラです。路線バスやワゴン型バスをはじめとする地域公共交通が市民の皆様の移動を支えている横浜では、高齢化の進展やライフスタイルの変化などにより、買物や通院、お子さんとのお出かけなど、身近な移動手段の更なる充実を求める多くの声をいただいています。 ・このたび策定した「横浜市地域公共交通計画」は、地域にお住まいの皆様、交通事業者や企業・団体等の皆様、そして行政が連携し、地域の実情に適した交通サービスの充実を進めていくためのアクションプランです。 ・横浜市域のすべての地形や道路の状況など分析したデータに基づき、地域交通を「守る」「増やす」、積極的に「使う」ことを基本方針に、バスネットワークの維持や新たな地域公共交通の導入、地域交通の利用促進・外出促進などの取組を、関係するすべての皆様と連携しながら進めていきます。 ・策定にあたっては、市民の皆様をはじめ、交通事業者、有識者や関係機関など多くの方々から幅広い貴重なご意見をいただきました。改めて厚く御礼申し上げます。 ・皆様と共に策定したこの計画のもと、移動しやすく出かけたくなるような、そして、誰もがいきいきと安心して暮らせる街の実現を目指してまいります。 2025(令和7)年4月 横浜市長 山中 竹春  【目次】 第1章 計画に関する基本事項              1ページ (1) 背景・趣旨                   1ページ (2) 計画の区域                   1ページ (3) 計画の期間                   1ページ (4) 計画の位置付け                 2ページ 第2章 横浜の地域交通を取り巻く状況と課題       3ページ (1) 状況と課題                   3ページ (2) これまでの取組の振り返り           13ページ (3) 今後予想される影響              15ページ 第3章 目指す地域公共交通の将来像          17ページ (1) 地域公共交通とは               17ページ (2) 目指す姿                   18ページ (3) 基本方針                   19ページ 第4章 地域公共交通の充実に向けた考え方と施策の方向 21ページ (1) バスネットワーク維持             21ページ (2) 新たな地域公共交通の導入           25ページ (3) 利用促進・外出促進              29ページ (4) DX・GX・共創の取組の推進         33ページ 第5章 計画期間中に実施する取組           37ページ 第6章 指標の設定                  51ページ (1) 目標(横浜市全体の評価指標)         51ページ (2) 地域の診断の要素(各地域単位での評価指標)  53ページ 第7章 国庫補助事業の活用              57ページ (1) 考え方                    57ページ (2) 活用の方向性                 57ページ 第8章 推進体制                   60ページ 【1ページ】 第1章 計画に関する基本事項 (1)背景・趣旨 ・令和2(2020)年11月、「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律等の一部を改正する法律」(以下「地域交通法」という。)が施行され(図1-1)、地方公共団体が交通事業者等と連携して「地域公共交通計画」を作成し、多様な輸送資源の活用による移動ニーズへのきめ細やかな対応や、サービス改善による持続可能な交通サービスの提供の確保などが示されました。 ・近年、公共交通の利用者の減少や運転士の不足により、バスやタクシーといった公共交通サービスの確保が厳しさを増しています。東京都市圏パーソントリップ調査の結果では、昭和43(1968)年の調査開始以来、平成30(2018)年に初めて総移動回数が減少に転じ、都市交通政策は転換期を迎えています。加えて、幅広い世代のライフスタイルや働き方の変化、運転免許証の自主返納の増加、運転士の労働時間の上限規制に伴ういわゆる2024年問題による運転士不足の深刻化など、環境の変化に対応しながら交通サービスの提供を確保することが難しい局面を迎えています。 ・また、令和6(2024)年4月には改正障害者差別解消法が施行され、障害のある人への合理的配慮の提供が一層求められています。 ・公共交通は、誰もが日常生活を送る上で必要不可欠であるとともに、人々の外出を促し、健康増進やまちの価値の向上など多面的な効果をもたらすものであることから、市域全体で地域に適した交通サービスの充実を図るため、地域交通法に基づく「横浜市地域公共交通計画」(以下「計画」という。)を策定します。 (2)計画の区域 ・横浜市全域とします。 (3)計画の期間 ・令和7(2025)年度から令和11(2029)年度までの5年間とします。 【2ページ】 (4)計画の位置付け ・本市の交通政策全般にわたる計画としては、「横浜都市交通計画」(平成20(2008)年3月策定、平成30(2018)年10月改定)があり、政策目標や施策の方向性などを提示したマスタープランとして、目標年次の令和12(2030)年頃に向けて、引き続き運用していきます。今回新たに策定する計画は、そのうち地域公共交通の取組を推進するためのアクションプランとして運用します(図1-1)。 図1-1 計画の位置付け 地域公共交通計画 ・今後5年間の取組を推進するアクションプラン(令和7~11年度) 横浜都市交通計画 ・本市交通政策全般にわたる計画(目標年次:令和12年度) 上位計画 ・財政ビジョン ・行政運営の基本方針 ・都市計画マスタープラン ・中期計画 関連計画 ・自転車活用推進計画 ・駐車場整備基本計画 ・交通安全実施計画 ・地域福祉保健計画 ・障害者プラン ・子ども・子育て支援事業計画 ・よこはまポジティブエイジング計画 ・地球温暖化対策実行計画 ・横浜DX戦略  ・バリアフリー基本構想 など 【3ページ】 第2章 横浜の地域交通を取り巻く状況と課題 (1)状況と課題 ア 人口動態の変化 ・本市の人口動態は、令和4(2022)年1月に対前年同月比での人口が戦後初めて減少しました。今後、本格的な人口減少を迎えることが予測されています。また、年少人口(0~14歳)及び生産活動を支える生産年齢人口(15~64歳)の人口は減少が続く一方、高齢人口(65歳以上)は2045年頃まで増加が続くと見込まれています(図2-1)。 ・単独高齢世帯の増加(図2-2)による社会的孤立のリスクの高まりや、自治会町内会における地域活動の担い手不足など、地域コミュニティの希薄化が進行している中で、地域の共助による外出支援やイベント等の交流機会の減少が見られます。 ・加えて、体力や気力、認知機能など、からだとこころの機能(はたらき)が低下し、将来介護が必要になる危険性が高いフレイル状態にある高齢者が増加しています。 ・また、障害者手帳所持者等の移動制約者数も増加傾向にあります(図2-3)。 図2-1 将来人口推計 【4ページ】 図2-2 単独世帯の年齢別の将来推計 図2-3 移動制約者数の推移 【5ページ】 イ 地理的な特性 ・本市では市域全体に鉄道ネットワークが整備されており、その鉄道駅を中心としてバスネットワークが広く整備されています。 ・住宅地は丘陵地を含め市域全体に広がっているため、鉄道駅やバス停と住宅地との間の高低差が大きく(図2-4)、アクセス路が急な坂道や階段などとなっている地域が多くあります。 ・鉄道駅やバス停から勾配を考慮しつつ、道路距離で鉄道駅から800m以内、バス停から300m以内の公共交通圏域を算出した結果、市内可住地の約8割が圏域内となりますが、圏域外(いわゆる交通空白地)が郊外部を中心に点在しています(図2-5)。また、高齢になるにつれて徒歩での移動可能な範囲が狭くなる傾向があるため、徒歩による移動の負担が大きくなったり、制約が伴ったりする市民が増加していると考えられます。 図2-4 平均傾斜角 【6ページ】 図2-5 公共交通圏域図(125mメッシュ) 【7ページ】 ウ 生活様式の変化 ・ライフスタイルや働き方の変化等により、移動ニーズも変化し、多様化しています。また、テレワークの普及(図2-6)や通信販売利用の増加などにより、駅周辺だけでなく、自宅周辺の住環境に求める機能も変化しています。 ・本市は他都市と比べて一世帯当たりの自動車保有台数が低いことが特徴ですが(図2-7)、通勤・通学だけでなく高齢者の日中の外出や子どもの習い事への送迎など、移動の時間帯や距離、頻度等に応じて、移動手段を選択できる環境へのニーズが高まっています(図2-8)。日常生活において、通勤・通学、買物・通院、子どもの送迎や親の介護など世帯ごとに様々な移動シーンがある中で、自らが運転し移動や家族の送迎を行うマイカー以外にも、シーンに応じた移動手段を選択できることが必要な状況です。 図2-6 全就業者におけるテレワーカー割合 ・首都圏の全就業者におけるテレワーカー割合は、2019年は18.8%だが、2023年には37.6%に上昇している。 【8ページ】 図2-7 一世帯当たりの自動車保有台数 図2-8 小学生の放課後の過ごし方(平日) 【9ページ】 エ 路線バス ・市内の路線バスは、市営及び民営の合計10事業者によって運行されています。人口減少や高齢化の進展による利用者減少、運転士不足や運転士の高齢化など、時代の変化に伴い経営環境は厳しくなっています。 ・横浜市内の路線バスは、5kmを超える路線が多い一方、利用者の8割以上は乗車距離4km未満となっています(図2-9)。また、赤字路線を多く抱えており(図2-10・横浜市交通局の例)、必ずしも効率的なサービスとなっていない状況です。さらに、一日当たりの乗車人員は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響などにより大きく減少し、収束後も以前の水準には戻っていません。加えて、いわゆる2024年問題により運転士不足が一層顕著となり(図2-11)、本市においても減便や最終バスの繰り上げを実施せざるを得ない状況です。 ・利用状況としては、朝夕のピーク時間帯をはじめ、生産年齢人口(15~64歳)のバス利用者があらゆる時間帯で減少している一方、高齢人口(65歳以上)の昼間時間帯の利用者は増加しています。朝夕の通勤・通学の移動手段として路線を維持しながら、昼間の時間帯も日常生活の移動手段として、路線の確保が必要な状況です。 ・さらに、二次元バーコードやクレジットカード決済など多様な支払手法の導入や、ウェブサイトでの接近情報の提供など、利用者の更なる利便性向上に向けた取組が求められています。 図2-9 市内の路線バス系統延長とバス平均乗車距離の比較 【10ページ】 図2-10 一般乗合バスの営業係数別路線数の推移(横浜市交通局) 図2-11 県内の乗合バス運転士数・総走行キロの推移 【11ページ】 オ タクシー ・市内の法人及び個人のタクシー車両届出台数は約5,600台となっています。タクシーも路線バスと同様に、運転士不足(図2-12)など、厳しい経営環境に置かれています。一日当たりの乗車人員は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響などにより大きく減少し、令和元年に比べて、令和2年では約4割減少(図2-13)しました。 ・その後、感染症の収束後の需要増加に対応できないエリア・時間帯が存在したことから、運転士採用や、令和6(2024)年3月に創設された日本版ライドシェア(自家用車活用事業)の導入等に取り組んでいます。引き続き、一時的・局所的な需要への柔軟な対応が求められます。 ・また、タクシーにおいても、多様な支払手法の導入や配車アプリの普及など、利用者の更なる利便性向上に向けた取組が進められています。 図2-12 市内の二種免許保有者数(タクシーなど)の推移 【12ページ】 図2-13 市内の一日当たりタクシー乗車人員 コラム 日本版ライドシェア(自家用車活用事業)とは ・令和6(2024)年3月に、地域交通の「担い手」「移動の足」不足解消のため、タクシー事業者の管理の下で、マイカー(自家用車)・一般ドライバーを活用した運送サービスの提供を可能とする日本版ライドシェアが創設されました。タクシー配車アプリデータ等を活用し、タクシーが不足する地域・時期・時間帯を特定して不足分を補う形で運行されます。 【13ページ】 (2)これまでの取組の振り返り ・本市では生活に必要な路線バスの維持や、地域ニーズを踏まえた地域交通の導入支援に取り組んできました。 ・このうち、「地域交通サポート事業」(図2-15)においては、近年、自宅から最寄りのバス停や生活利便施設など身近な目的地への移動手段や、時間帯や距離、頻度等の様々なシーンに応じて選択できる移動サービスの必要性が高まる一方で、地域活動の担い手の高齢化、採算性の確保が難しい地区の増加など、地域交通の導入に至ることのできない、又は継続が困難なケースが増えています。 ・さらに、高齢者や障害者等の外出支援に資する制度として敬老特別乗車証(敬老パス)や福祉特別乗車券(福祉パス)等の導入にも取り組んできました(表2-1)。これまで導入した地域交通では、運行する交通事業者によって、敬老パス等が利用できない場合があり、地域差が生じています。 ・その他、移動に支援を必要とする方々に対しては、福祉タクシー利用券の交付といった支援や、福祉有償運送などの移動サービスがあります。 図2-15 地域交通サポート事業の概要 【14ページ】 表2-1 公共交通の利用に関するこれまでの移動支援(補助)の取組 生活交通バス路線維持制度 ・概要 市内の生活交通として必要な路線バスを維持 ・支援内容 事業者に対し運行経費の一部を交付 ・創設 平成19年度 ・所管課 都市整備局都市交通課 ・利用対象者 バス路線の沿線住民 ・利用対象機関 路線バス ・現状等 13路線、事業費(令和5年度)231,402千円 地域交通サポート事業 ・概要 地域の主体的な取組みによる地域交通の取組支援 ・支援内容 地域交通の取組伴走支援、導入に係る経費支援 ・創設 平成19年度 ・所管課 都市整備局都市交通課 ・利用対象者 バス路線の沿線住民 ・利用対象機関 路線バス、ワゴン型バス ・現状等 本格運行17地区、事業費(令和5年度)110,658千円 敬老特別乗車証(敬老パス) ・概要 高齢者の外出及び社会参加の支援 ・支援内容 乗車証の交付 ・創設 昭和49年度 ・所管課 健康福祉局高齢健康福祉課 ・利用対象者 市内在住70歳以上 ・利用対象機関 路線バス、市営地下鉄、シーサイドライン ・現状等 交付者数約40万人、事業費(令和5年度)12,588,275千円 敬老特別乗車証(福祉パス) ・概要 障害者の外出及び社会参加の支援 ・支援内容 乗車券の交付 ・創設 昭和38年度 ・所管課 健康福祉局障害自立支援課 ・利用対象者 市内在住で身体、知的、精神障害者のうち一定の条件を満たす方 ・利用対象機関 路線バス、市営地下鉄、シーサイドライン ・現状等 交付者数約6万人、事業費(令和5年度)1,703,391千円 福祉タクシー利用券 ・概要 障害者の外出及び社会参加の支援 ・支援内容 利用券の交付 ・創設 昭和58年度 ・所管課 健康福祉局障害自立支援課 ・利用対象者 市内在住で身体、知的、精神障害者のうち一定の条件(重度障害)を満たす方 ・利用対象機関 タクシー、福祉有償運送等 ・現状等 交付者数約2.5万人、事業費(令和5年度)741,877千円 コラム 福祉有償運送とは ・タクシーを含む公共交通機関を利用することが困難な介護認定された高齢者や障害者手帳等をお持ちの方を対象に、通院や買い物、レジャー等を目的にNPO法人等が行う介助付き移動サービスです。利用にあたっては、事前に実施団体に登録する必要があります。また実施する団体は、事前に「横浜市福祉有償移動サービス運営協議会」への登録申請が必要です。 【15ページ】 (3)今後予想される影響 ・厳しい社会情勢の変化の中では、交通サービスの水準の維持が困難となる地域が発生し、市民の多様化する移動ニーズに応えることが今後ますます難しくなると想定されます。 ・交通サービスの水準が低下すると、地域住民の外出に対する抵抗感が増加し外出機会が減少することが懸念されます。これにより、心身の健康状態の悪化(フレイルリスクの増加)、地域交流の希薄化(ソーシャルキャピタルの低下)につながる恐れがあります。さらに、移動手段の選択肢の減少によってマイカーへの依存度が高まり、道路渋滞や交通事故、二酸化炭素排出量の増加にもつながり得るなど、様々な分野に悪影響が生じることが考えられます(図2-17、表2-2)。 図2-17 地域交通が関係する分野イメージ 【16ページ】 表2-2 交通サービスの水準が低下することで想定される負の影響 変化 ・外出機会、意欲の減少 ・マイカー依存度の高まり、免許返納者の減少 想定される負の影響(イメージ) ・医療、福祉  健康状態の悪化(フレイルリスクの増加) ・商業  消費の低迷、まちのにぎわいの低下 ・交通安全  交通事故の増加 ・教育  交通事故の増加 ・定住促進  生活満足度の低下、人口の流出 ・環境  二酸化炭素排出量の増加 ・地域コミュニティ  友人、地域との交流の減少、コミュニティの希薄化(ソーシャルキャピタルの低下) ・財政  医療、介護等財政状況の悪化 コラム フレイルリスクについて ・外出による身体活動に加え、友人や地域との交流など社会活動が活発になることが、よりフレイル予防効果を高めるとされています。 【17ページ】 第3章 目指す地域公共交通の将来像 (1)地域公共交通とは ・本市では、地域住民の買物や通勤・通学、通院等の日常生活圏を移動するための交通全般を「地域交通」としています。 ・地域交通のうち、既存の公共交通であるバス・タクシーが中心的役割を果たしながら、地域で常に提供されていて、不特定多数の人が安全・安心に利用できる交通サービスを「地域公共交通」とし、本計画で施策を位置付けます(図3-1)。 図3-1 地域交通・地域公共交通の概念 【18ページ】 (2)目指す姿 「目指す地域公共交通の姿」 ・地域住民、交通事業者、企業・団体等、行政の連携により、市域全体で地域公共交通を充実させ、誰もがいきいきと安心して暮らせる街を実現する ・地域公共交通は日常生活を送る上で必要不可欠であるとともに、人々の外出を促し、健康増進やまちの価値の向上など多面的な効果をもたらす重要な社会基盤です。そのため、地域住民や交通事業者、企業・団体等と連携し、地域公共交通の充実を図るとともに、地域の様々な課題の解決を図りながら、誰もがいきいきと安心して暮らせる街を実現します。 図3-2 地域公共交通のイメージ 【19ページ】 (3)基本方針 ・目指す姿の実現に向け、地域公共交通を「守る」・「増やす」、そして積極的に「使う」の3つを基本方針(解説3-1)として設定します。 ・この基本方針のもと、「バスネットワーク維持」、「新たな地域公共交通の導入」、「利用促進・外出促進」、「交通DX・GX・共創の推進」の4つを施策として設定し、取組を推進します。各施策の考え方や方向は次章で整理します。 解説3-1 「3つの基本方針について」 基本方針Ⅰ 地域公共交通を「守る」 施策1 バスネットワーク維持 ・既存のバスネットワークについて、運行の効率化を図りながら必要な路線バスを維持します。 基本方針Ⅱ 地域公共交通を「増やす」 施策2 新たな地域公共交通の導入 ・駅やバス停から離れた公共交通圏域外(いわゆる交通空白地)を中心に、交通が不便な地域に、新たな地域公共交通を導入します。 基本方針Ⅲ 地域公共交通を 積極的に「使う」 施策3 利用促進・外出促進 施策4 交通DX・GX・共創の推進 ・また、持続可能な地域公共交通とするために、地域公共交通の利用促進や企業のノウハウや技術の活用を進めていきます。 【20ページ】 図3-3 基本方針と公共交通圏域の関係 【21ページ】 第4章 地域公共交通の充実に向けた考え方と施策の方向 (1)バスネットワーク維持 ア 考え方 ・朝夕の通勤・通学や日中の買物・通院など、多くの市民の日常生活を支えていく上で、鉄道駅を中心とした交通ネットワークを維持することが重要です。 ・今後、鉄道と路線バスの機能分担や連携を促すとともに、行政とバス事業者の連携を一層強化し、効果的・効率的なバスネットワークの再編(図4-1)を進めることが重要です。 ・また、バス事業者の経営状況の悪化や運転士不足の課題が顕在化する中で、市民の生活に必要な路線バスを維持するなどの行政支援も必要です。 ・利用者としては、「バスは最寄駅まで」「路線によってはバスを乗り継ぐ」といった考え方のもと、目的地に向けて、バスと鉄道を組み合わせた利用、バスとバスを組み合わせた利用など、路線バスの使い方を変えていくことが必要となる場合も考えられます。 【22ページ】 図4-1 バスネットワークの再編イメージ 【23ページ】 イ 施策の方向 ・バスネットワークの再編、長距離路線の短絡化に必要となる乗継拠点や折り返し施設等の確保・整備の支援について検討します。 ・あわせて、乗継情報の提供、乗継割引制度、既存ストックの活用も含めた待合空間の機能確保等について検討し、利用者の利便性向上やまちの賑わいづくりにつなげていきます。 ・また、大規模な土地利用転換など、新たなまちづくりの動向をふまえた新規路線の導入等も行います。 ・運行本数の多い路線に連節バスを導入して運行の効率化を図り、路線の輸送力を確保しつつ、生み出された運転士等の経営資源を他の路線に再配分する取組(図4-2)を推進します。 ・運転士不足への対応として、働きやすい環境づくりや人材確保に向けた補助制度の創設や、採用イベント等の広報活動を推進します(解説4-1)。 ・上記施策を進めながらも、路線を廃止せざるを得ない状況となり、かつ、廃止によって新たに公共交通圏域外のエリアが発生するなど日常生活の利便性が大きく低下する場合、生活交通バス路線として補助金を交付し、維持を図ります。 ・施策の効果を高めるため、地域の特性に対してサービスの内容が適切か、利用者のニーズに合っているか、サービスの実施にかかる費用に無駄がないかなど、バス事業者と連携してデータに基づいた分析評価を行います。 図4-2 バスネットワークの維持・充実に向けた取組イメージ 【24ページ】 解説4-1 「バス運転士確保に向けた取組」 住宅手当補助制度の創設 ・バス運転士不足への対応策として、働きやすい環境づくりを目指し、民間バス事業者の運転士を対象とした住宅手当補助制度を創設します。 補助概要:入社5年目までの運転士を対象に家賃の一部を補助 補助額 :最大3万円/月・人 補助期間:最長5年間 人材確保イベントの開催 ・神奈川県バス協会などと連携し、バス運転士不足の解消と公共交通の利用促進を目的としたイベントを定期的に開催していきます。   <参考:令和6年度開催概要> 開催日:令和6年9月8日(日) 内容 :・バスドライバー募集会社合同説明会(市内の8事業者が参加)     ・座談会(バスドライバーのやりがい・魅力について)     ・小型EVバス車両展示     ・子ども対象おえかきコーナー(参加者にグッズ配布) 【25ページ】 (2)新たな地域公共交通の導入 ア 考え方 ①地域に適した地域公共交通の充実 ・バスやタクシーなど既存の公共交通に加え、鉄道駅やバス停から一定程度離れた公共交通圏域外を中心に、自宅と最寄駅やバス停、生活利便施設などをつなぐ、地域に身近な地域公共交通(図4-3、解説4-2)を導入し、市域全体で充実を図ることが重要と考えています。また、地域公共交通の充実により、通勤・通学者や子育て世代、増加傾向にある高齢者、障害者などの様々な利用者の移動を支え、あらゆる世代の外出を促していくことが重要です。 ・そのため、誰もが地域公共交通を利用できるよう、交通事業者による乗合タクシー、マイカーや施設送迎車の活用、既存の公共交通ではカバーしきれないきめ細かな移動ニーズへの対応が可能なシェアサイクルなど地域公共交通を充実させ、交通サービスの選択肢を広げていくことが必要です。 図4-3 地域公共交通のイメージ(再掲) ②安全・安心の地域公共交通の確保 ・地域公共交通が安全・安心であることは、利用者はもちろん、地域内の歩行者や自動車への影響も含め非常に重要です。そのため、バスやタクシーをはじめとした‘プロ’のドライバーが運転を担う交通事業者の協力により、地域公共交通の導入を図ることが重要です。 ・あわせて、地域の顔の見える関係で安心して利用できる住民活動によるボランティア輸送や商業施設・福祉施設など地域の身近な企業・団体等の地域貢献による輸送も、交通事業者で賄いきれない需要への対応として重要な選択肢と考えられます。 ・様々な地域公共交通が、道路空間の中で安全・安心に共存するためには、交通ルールの周知をはじめ、通行空間整備もより一層重要になってきます。 【26ページ】 解説4-2 「新たな地域公共交通の導入例」 ①乗合タクシー(路線定期運行)  四季めぐり号(旭区四季美台地区) 運行主体:交通事業者(バス、タクシー) 運行形態:決められたルートとダイヤで運行 その他:予約は不要 ②乗合タクシー(デマンド型運行)  あおばGO(青葉区東部地区)  令和4~6年度実証実験実施 運行主体:交通事業者(バス、タクシー) 運行形態:決められたルートやダイヤは無く、予約に応じて乗降ポイント間を運行 その他:予約・配車システムが必要 ③マイカーや施設送迎車等の活用(ボランティア輸送)  ひがまた号(戸塚区東俣野地区)  令和6年度実証実験実施 運行主体:地域のボランティアや法人、企業等(道路運送法上の許可・登録不要) 運行形態:運行主体や地域との話し合いで決定 その他:利用者からの運賃の徴収は不可(燃料費等の実費は徴収可能) 【27ページ】 イ 施策の方向 ・新たな地域公共交通の導入について、地域交通サポート事業に代わる新たな制度「横浜市みんなのおでかけ交通事業」により、取組を推進します。 ・公共交通圏域外を含む地域に対しては、行政主導により、潜在的な移動ニーズの確認と、ニーズに応じた地域公共交通の導入を支援していきます(図4-4)。導入にあたっては、各区の社会福祉協議会、地域ケアプラザ等の地域に身近な関係者と連携しながら地域の実態を把握していきます。 ・従来の「路線定期運行」や広域の分散需要に対応する「デマンド型運行」、地域の共助による「マイカーや施設送迎車等の活用」など一定期間の運行を通して、運行内容の検証と改善を重ね、地域に適したサービスとして定着を促します。その中で、利用実績データの取得・活用や必要な補助金の交付等支援を行います(解説4-3)。 ・シェアサイクルは、事業者との協働により市内全域で、サイクルポート数の拡充や異なる事業者間の相互乗入など、更なる移動の利便性向上を図ります。また、交通ルールの周知啓発や自転車通行空間の整備など、安全な利用環境の推進を図ります。 ・さらに、新たな交通サービスの選択肢として、交通事業者の対応が困難な場合など、公共ライドシェア(交通空白地有償運送)等の制度活用も検討します。 ・あわせて、自家用車の活用にあたっては、安全確保のための運転技能の向上や担い手確保のためのボランティアへの謝礼に対する支援など、運転者の育成や確保の支援を進め、自治会町内会や企業、地域で活動する団体など様々な主体による取組を促し、小さな需要に対応していきます。地域公共交通をきめ細かく充実させていくとともに、福祉の移動サービスも含め、移動を支える多様な取組の実現へつなげていきます。 図4-4 新たな地域公共交通の導入イメージ(再掲) 【28ページ】 解説4-3 「横浜市みんなのおでかけ交通事業」(地域交通サポート事業に代わる新たな制度) 【取組フロー】 「旧制度」 事前相談、導入検討期間(2~4年)、実証運行(1~2年)、本格運行 「新制度」 事前相談、導入検討期間(1~2年)、実証運行(3年)、本格運行 【主な支援内容】 「これまでの支援内容(路線定期運行のみ)」 実証運行時 ・バス停設置等環境整備費 ・運行経費など 本格運行時 ・車両費等の初期費用 「新たな支援内容(路線定期運行、デマンド型運行)」 実証運行時 ・バス停設置等環境整備費 ・運行経費など ①実証運行期間を現行の2年間から3年間に延長 ②通年で継続的に実証運行できるよう調整 ③目標収支率を設定し、2年連続未達の場合は実証運行を中止し、再検討を行う  目標収支率:1年目)25%2年目)35%3年目)50% 本格運行時 ・車両費等の初期費用 ・運行経費経費の50%以下かつ上限600万円/年 ・システム費(デマンド型運行)上限520万円/年 ※ 運行経費の支援については、運行経費から収入(運賃、協賛金等)を差し引いた金額が対象 ※ デマンド型運行については、路線定期運行よりも効率的な運行となる場合に限る(企業主体想定) ※公共交通圏域で完結する路線を導入する場合、本格運行の運行経費、システム費の支援はしない(これまでの支援と同様) 「マイカーや施設送迎車等活用の場合」 これまでの支援内容 実証運行時、本格運行時 ・車両費等の初期費用(ボランティアバス) ・車検費用、自動車税など 新たな支援内容 ・車両費等の初期費用 ・車検費用、自動車税 ・車両修繕費 上限15万円/年 ・ボランティアへの謝礼 1000円/便 など ※公共交通圏域内外を問わず市内全域を対象 ※最低運行本数を設定(20往復/月以上) 【29ページ】 (3)利用促進・外出促進 ア 考え方 ・持続可能な地域公共交通の実現には、多くの方に利用いただくことが不可欠であり、モビリティマネジメント(解説4-4)を通して、積極的に利用する意識の醸成が重要です。 ・きっかけとして、お住まいの地区の地域公共交通の状況(運行内容や頻度、収支の実態、利用者数など)や利用することによる効果を「知って」いただく必要があります。その上で、実際に「乗って」いただき、地域公共交通を支えるという意識を持っていただくことが重要です。 ・また、外出の機会が増え利用者同士のコミュニケーションが活性化するなど、移動自体を「楽しめる」ようになると、さらに外出機運を高めることにつながります。 ・朝夕の通勤・通学などの既に習慣化された外出をはじめ、子育て世代や増加傾向にある高齢者、障害者なども含めあらゆる世代の外出が促され、地域公共交通の利用が促進されることは、交通サービスの維持だけでなく地域の人々の健康維持やまちの活性化をはじめ、脱炭素化など多面的な効果を及ぼし、豊かな街の実現にもつながります(図4-5) 解説4-4 「モビリティマネジメントとは」 ・一人ひとりの移動を対象としつつ、それらが社会的にも個人的にも望ましい方向に自発的に変化することを期待する施策であり、「過度なマイカー利用の状態から、地域公共交通や自転車等を適切に利用する状態」に少しずつ変えていくための取組のことをいいます。 【30ページ】 図4-5 交通・福祉・まちづくりの連携イメージ 「地域公共交通の導入によるねらい」 ①交通利用促進による地域公共交通の維持、確保 ②福祉外出促進による健康維持、社会参加の継続 ③まちづくり商業施設等の利用促進による生活サービス維持、まちの活性化 ④地域支え合いの関係構築等による様々な課題解決、地域の活力向上 【31ページ】 イ 施策の方向 ・市民の皆様にも積極的に交通サービスを「知って」「乗って」「楽しんで」いただくとともに、モビリティマネジメントを推進し、地域住民、交通事業者、企業・団体等、行政みんなで支える地域交通の実現を目指します。 ・「知って」いただくため、多様な主体が協力・連携して、あらゆる世代の需要や行動の特性を踏まえながら、動画・広報紙の作成やウェブサイト、デジタルサイネージ、SNS等の様々な媒体の活用を進めます。あわせて、地域活動の集まりやイベントなどの様々な機会を捉えた積極的な情報発信を進めます。 ・「乗って」いただくため、高齢者や子育て世代等をはじめとしたあらゆる世代のニーズに応じた利用促進策に取り組みます。あわせて、高齢者、妊婦、車いす利用者、障害者など、誰にとっても利用しやすい車両の導入や乗り場環境の改善、サービスの拡充など地域公共交通の利便性向上を図るとともに、周知啓発を積極的に行い、誰もが「安心して自由に生活できるインクルーシブなまち」(解説4-5)の実現につなげていきます。 ・「楽しんで」いただくため、地域のイベントとのタイアップなど外出したくなる目的づくりや地域の生活利便施設とのサービス連携による魅力向上などについても、地域や企業・団体等、交通事業者などと連携し外出促進策に取り組みます。 【32ページ】 解説4-5 「安心して自由に生活できるインクルーシブなまちとは」 ・横浜市では、誰もが、心置きなく、自分の意思で、暮らす、働く、訪れるなどの生活を送り、様々な活動に参加できるまちを目指しています。既存の公共交通の1つであるタクシーには、高齢者、子育て世代、車いす利用者、障害者などの移動を支援する、様々なサービスがあります。 ・「ユニバーサルデザインタクシー(UDタクシー)」は、原則として研修を修了した運転士が乗務し、車いすのまま乗車することができる車両となっており、一般のタクシー料金で利用することができます。 ・また、妊娠中の方をサポートする「陣痛タクシー」や、子ども一人での移動をサポートする「子育て支援タクシー」といったサービスもあります。 コラム 交通政策とSDGsの理念 ・SDGs(持続可能な開発目標)は「誰一人取り残さない」持続可能でよりよい社会の実現を目指す世界共通の目標です。2030年を達成年度とし、17のゴールと169のターゲットから構成されています。目標11「住み続けられるまちづくりを~包摂的で安全かつ強靭(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現する~」のターゲット「11.2」において、「2030年までに、脆弱な立場にある人々、女性、子ども、障害者、および高齢者のニーズに特に配慮し、公共交通機関の拡大などを通じた交通の安全性改善により、すべての人々に、安全かつ安価で容易に利用できる、持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する」として規定されています。 【33ページ】 (4)DX・GX・共創の取組の推進 ア 考え方 ・地域公共交通の充実に向けては、AI・IoT・自動運転等の技術革新を踏まえた移動需要への効率的な対応と利用者の利便性の向上、交通データの蓄積によるサービス改善等といったデジタルトランスフォーメーション(DX)の視点を積極的に取り入れる必要があります。 ・また、脱炭素社会の実現に向け、グリーントランスフォーメーション(GX)の取組を推進していくことが重要です。 ・これに加え、地域の交通課題の解決やまちの活性化などの推進力を高めるため、民間企業をはじめ地域を支える多様な主体の参画を促し、公共交通サービスの維持・充実の効果を一層高める「共創」の視点が重要です(図4-6)。 図4-6 共創のイメージ 【34ページ】 イ 施策の方向 ①DX ・技術の進展によりパーソナルモビリティやグリーンスローモビリティなど様々なモビリティツールが登場しており、新たな地域公共交通の選択肢として、安全性や実現可能性について検討します。 ・地域公共交通への自動運転技術の導入について、必要となる関係機関との調整や地域住民の理解を図ることなど、企業の取組を長期的な視点で支援します。 ・様々なデジタル技術を積極的に活用し、移動実態データ(乗降地、目的施設、利用頻度等)を取得し、関係者間で共有・活用することで、地域住民などの関心をより高めるとともに、サービス改善に活かすなど、地域公共交通の持続性の向上につなげます。 ・来街者も含め誰もが使いやすい地域公共交通としていくため、二次元バーコードやクレジットカードを用いたタッチ決済など多様な支払方法の導入・キャッシュレス化を推進します。 ・多様な交通サービスをシームレスに乗り継ぐ環境を整えるだけでなく、目的地となる鉄道駅や生活利便施設などの商業・サービス機能と交通サービスを一体として捉えることで地域課題を解決する有効な手段としてMaaSの検討を行います。MaaSは、移動や購買、検索など様々な利用履歴のデータを評価、分析、管理することが可能であり、地域の課題や移動の価値を可視化するコミュニケーションツールとしての活用が期待されることから、民間事業者と連携し、実現可能性について検討します(図4-7)。 図4-7 MaaSとデータ活用のイメージ 【35ページ】 ②GX ・一定数の乗客が乗り合う地域公共交通は、一般的に、マイカーに比べて利用者1人あたりの二酸化炭素排出量が少ないエコな乗り物です。また、シェアサイクルも同様に二酸化炭素排出量が少ない乗り物です。これら地域公共交通の利用に転換することは脱炭素社会の実現につながることから、利用促進に取り組みます。 ・EV(電気自動車)・FCV(燃料電池自動車)等の車両は一般的にガソリン車に比べて燃料費を削減でき、経営効率化の観点からも有効であることから、環境に配慮した車両の導入やそれに伴う充電施設等の設置を推進します。   ③共創 ・企業・団体等との共創による取組を一層推進するため、本市の地域交通課題を積極的に発信し、課題解決に意欲的な民間企業の取組提案を募集するとともに、民間企業等からの提案についても積極的に活用します(解説4-6)。 ・民間企業の主体的な取組による交通が不便な地域の解消や、民間企業のノウハウや技術革新による新たな交通サービスの実現など、移動課題の解決に向けた推進力や、施策実行の柔軟性、多様性を高めていきます。 ・その中で、特に、AIにより予約状況に合わせた適切な運行ルートを算出し最適な配車を実現する「デマンド型交通」を、横浜市みんなのおでかけ交通事業の支援メニューとして創設し、主体的に導入に取り組む企業を支援します。 ・身近な生活の拠点となっている鉄道駅やバス停周辺において、民間企業が所有する土地や建物を活用し、地域公共交通の乗降、待合、停留等に資する機能を確保するなど、民間企業とともに交通とまちづくりの連携を図っていきます。 【36ページ】 解説4-6 「民間事業提案窓口」 ・社会的課題の解決を目指し、民間事業者と行政の対話により連携を進め、相互の知恵とノウハウを結集して新たな価値を創出するという共創の理念のもと、企業・団体等の皆さまから、地域公共交通を起点とした地域やまちの課題解決に資する取組提案をいただく場として、提案窓口を設置します。本市の課題や基本方針、企業等の提供リソース等を対話により共有のうえ、各地区での事業化を目指します。 募集内容の例 ・交通が不便な地域の解消に資する、企業・団体等による主体的な取組  例:デマンド型交通の導入 ・交通が不便な地域の解消に資する要素技術や新たな交通サービスの創出等の取組  例:移動実態データの取得(乗降地、目的施設、利用頻度等) 企業による主体的な取組の事例:  デマンド交通実証実験「あおばGO!」 【37ページ】 第5章 計画期間中に実施する取組計画に関する基本事項 ・4つの施策「バスネットワーク維持」や「新たな地域公共交通の導入」、「利用促進・外出促進」、「交通DX・GX・共創の推進」について、計画期間(令和7(2025)年から令和11(2029)年までの5年間)に実施する取組を整理しました(表5-1)。 ・各取組を着実に進めるとともに、取組全体の評価・分析を行いながら、必要に応じて計画や施策の見直し・改善を行うことで、持続可能な地域公共交通の維持・確保を図っていきます。 表5-1 取組一覧 基本方針1 地域公共交通を守る 施策1 バスネットワーク維持 ・取組ア バスネットワークの再編・効率化 ・取組イ 生活交通バス路線の維持 ・取組ウ バス運転士の確保策の推進 ・取組エ 市西部地域における交通ネットワークの構築 基本方針2 地域公共交通を増やす 施策2 新たな地域交通の導入 ・取組オ 新たな地域交通の導入支援「横浜市みんなのお出かけ交通事業」 ・取組カ マイカーや施設送迎車等を活用した交通サービスの担い手支援 ・取組キ 公共ライドシェア(交通空白地)、日本版ライドシェア等の活用 ・取組ク シェアサイクル事業の推進 基本方針3 地域公共交通を積極的に使う 施策3 利用促進・外出促進 ・取組ケ 地域の方々を対象とした ・取組コ マイカーや施設送迎車等を活用した交通サービスの担い手支援 ・取組サ 公共ライドシェア(交通空白地)、日本版ライドシェア等の活用 施策4 交通DX・GX・共創の推進 ・取組シ 新たな交通サービスの創出 ・取組ス 移動実態データ等を活用した移動需要の把握と共有 ・取組セ 公共交通のEV化・FCV化、インフラ整備の推進 ・取組ソ 共創の取組の推進(社会的課題の解決に向けた企業提案募集) 【39ページ】 公共交通を守る 施策1 バスネットワークの維持 ア バスネットワークの再編・効率化 実施主体 ・交通通事業者、横浜市(都市整備局) 内容 ・利用状況に応じたバスネットワークの再編や長距離路線の短絡化、連節バスの導入など運行の効率化を図るとともに、バスが走行する道路の拡幅や乗継拠点・折り返し施設の整備など運行に必要な走行環境整備を進めます。 ・運行効率化により生じた運転士や車両といった経営資源をその他の路線へ再配分し、エリア全体のバスネットワークを維持します。その他、バスの運行形態の変更についてもバス事業者と連携して取り組んでいきます。 対象 ・市内全域 主な施策の柱 ・バスネットワーク維持 ・利用 外出促進 スケジュール ・新規地区での路線再編・連節バス検討・導入(令和7~11年度) コラム 連節バス導入の事例 ・連節バスは、通常の大型バスと比べ、全長約 1.8 倍、定員約 1.5 倍あり、輸送力を向上させることができる車両です。 導入実績 ・青葉区北西部(運行事業者:東急バス、令和6年4月運行開始) ・戸塚区南西部(運行事業者:神奈川中央交通、令和6年7月運行開始) 導入効果 ・輸送力を確保することにより運行を効率化 ・経営資源の再配分による周辺路線の維持や乗継割引の実施 【40ページ】 公共交通を守る 施策1 バスネットワークの維持 イ 生活交通バス路線の維持 実施主体 ・交通事業者、横浜市(都市整備局) 内容 ・バス路線の廃止により公共交通へのアクセスが困難となる路線など、市民の生活交通として必要なバス路線「生活交通バス路線」を維持するため、運行するバス事業者に補助金を交付するとともに、上記路線の利用状況調査を継続的に実施し、運行効率化など運行形態の改善について検討を進めます。 ・広報よこはま等で積極的な利用啓発を実施します。 対象 ・市内全域 主な施策の柱 ・バスネットワーク維持 ・利用 外出促進 スケジュール ・補助金交付によるバス路線の維持(継続) ・補助路線の利用状況調査(令和5~7年度)  目標 令和7年度に5路線実施(令和6年度末まで7路線完了) ・運行効率化(令和7年度~) ウ バス運転士の確保策の推進 実施主体 ・交通事業者、横浜市(都市整備局) 内容 ・運転士不足によるバス路線の廃止・減便は喫緊の課題であるため、バス運転士の持続的な確保に向けたバス事業者支援として、運転士の住居費用の一部補助や採用募集の周知啓発等の取組を実施します。 ・また、取組の実施状況をバス事業者とともに検証しながら、働きやすい環境づくりや人材確保に向けた取組の検討を進めます。 対象 ・市内のバス路線の運行を担うバス事業者 主な施策の柱 ・バスネットワーク維持 スケジュール ・合同会社説明会の実施(令和7年度~毎年開催) ・運転士の住居費用の一部補助(令和7年度~最大5年間)  目標 運転士充足率100% 【41ページ】 公共交通を守る 施策1 バスネットワークの維持 エ 市西部地域における交通ネットワークの構築 実施主体 ・横浜市(脱炭素・GREEN×EXPO推進局、都市整備局) 内容 ・市内の西部地域には鉄道路線が東西方向に整備されていますが、駅間を結ぶ南北方向への移動手段が少ないという課題があります。 ・そこで、環状4号線等を活用した複数の鉄道路線とつながるバス交通ネットワークを新たに構築するとともに、瀬谷・上瀬谷間では道路混雑の抑制や多くの来街者等の需要に対応する新たな輸送システムを導入することで、西部地域の方々をはじめとする誰もが移動しやすいまちの実現を目指します。 対象 ・市内の西部地域 主な施策の柱 ・バスネットワーク維持 ・地域公共交通の導入 ・利用 外出促進 ・DX GX 共創 スケジュール ・瀬谷、上瀬谷間の専用道整備に向けた設計・都市計画手続(~令和8年度) ・瀬谷、上瀬谷間の専用道整備工事(令和10年度~) コラム 瀬谷・上瀬谷間の新たな輸送システムの導入について ・瀬谷、上瀬谷間では、バス専用の道路を整備し、連節バスが最大3台で隊列走行することで、少ない人員でより多くの人が円滑に移動するためのシステムの構築を目指します。 【42ページ】 地域公共交通を増やす 施策2 新たな地域交通の導入 オ 新たな地域公共交通の導入支援「横浜市みんなのおでかけ交通事業」 実施主体 ・地域住民、企業・団体等、交通事業者、横浜市(都市整備局、各区役所) 内容 ・公共交通圏域外を中心とした交通が不便な地域における、地域や企業等が主体となった新たな地域公共交通の導入について、地域の取組意向の確認や移動の実態調査を実施した上で、実証運行(最大3年間)を行い、具体の需要を確認しながら、地域に適した運行内容の検討・改善を進め、本格運行へつなげます。 ・さらに、これらに必要な経費を市が一定額負担するなど、地域や民間企業の取組を支援します。 「横浜市みんなのおでかけ交通事業」の取組で対象となる交通サービス「おでかけシャトル」の内容 ・地域公共交通のうち、マイカーや施設送迎等(白ナンバー)の活用【住民や施設によるボランティア輸送】 ・交通事業者による乗合タクシー(緑ナンバー)【路線定期運行、デマンド型運行】 対象 ・市内の交通が不便な地域  ※公共交通圏域外を含む場合、実証運行と本格運行への補助を実施 主な施策の柱 ・地域公共交通の導入 ・利用 外出促進 ・DX GX 共創 スケジュール ・公共交通圏域外の面積の大きな地区等を中心に、行政から地域意向の確認や運行計画の提案を積極的に進め、地域に適した地域公共交通の導入を支援(令和7年度~)  目標 50地区程度で取組を進め、公共交通圏域外の半減を目指す 【43ページ】 地域公共交通を増やす 施策2 新たな地域交通の導入 カ マイカーや施設送迎車等を活用した交通サービスの担い手支援 実施主体 ・横浜市(都市整備局、健康福祉局)、地域住民 内容 ・自家用車を活用した交通サービス(地域や施設によるボランティア輸送等)について、担い手の発掘及び運行の安全確保、取組の周知啓発等を目的に、地域支え合いドライバー支援講習を実施します。 対象 ・市内の交通が不便な地域 主な施策の柱 ・地域公共交通の導入 ・利用 外出促進 ・DX GX 共創 スケジュール ・地域支え合いドライバー支援講習の実施(令和5年度~)  地域の取組意向等を踏まえ、1~2地区/年で実施を予定 コラム 地域によるボランティア輸送の取組紹介 菊名おでかけバス ・運行主体:コミバス市民の会 ・車両:ワゴン型(定員8名)※有志の方からの貸与 ・運行経路:菊名駅西口~OKストア前~菊名駅前公園前 ・対象者:コミバス市民の会の会員 導入の背景 ・平成12(2000)年当初から、山坂の多い港北区菊名地域において気軽に地域内移動で利用できるツールを求める声が強くなりました。菊名駅近辺は通勤通学の至便地域ですが、駅から近い場所であっても勾配が急で、高齢者や乳幼児連れ、障害児者等にとっては出かけることが困難で、高齢者の閉じこもり率も市の平均を大きく超える地域でした。 ・試行錯誤(自家用車、バスを借り上げての試運行)の末、平成22年から週1回の菊名おでかけバスを開始しました。 【44ページ】 地域公共交通を増やす 施策2 新たな地域交通の導入 キ 公共ライドシェア(交通空白地)、日本版ライドシェア等の活用 実施主体 ・企業・団体等、横浜市(都市整備局)、交通事業者 内容 ・交通事業者の対応により、地域公共交通が十分に確保できない地区がある場合は、公共ライドシェア(交通空白地有償運送)、日本版ライドシェア(自家用車活用事業)、道路運送法における許可または登録を要しない運送等の制度を活用し、持続可能な運行に向けて取り組みます。 対象 ・市内の交通が不便な地域 主な施策の柱 ・地域公共交通の導入 ・DX GX 共創 スケジュール 公共交通圏域外における公共ライドシェア(交通空白地有償運送)等の検討、関係者調整・実施(令和7年度~) 【45ページ】 地域公共交通を増やす 施策2 新たな地域交通の導入 ク シェアサイクル事業の推進 実施主体 ・横浜市(道路局)、シェアサイクル事業者 内容 ・「移動の利便性向上」「都市の活性化」「脱炭素社会の形成」、「交通安全の推進」の4つを事業目的として、令和7年度から全市一体でのシェアサイクル事業を公民連携で推進します。 ・利用ニーズの高い横浜都心や駅周辺のポートの整備と合わせて、公共交通圏域外にもサイクルポートの整備を推進していきます。 対象 ・市内全域 主な施策の柱 ・地域公共交通の導入 ・利用 外出促進 ・DX GX 共創 スケジュール ・市内全域でのシェアサイクル事業の実施(令和7~11年度※)  ※最大で令和16年度まで事業延長可能 コラム シェアサイクル事業における移動データの分析・公表について ・シェアサイクルの移動データの分析結果から、都心部や鉄道駅周辺の回遊に加え、駅・バス停から一定程度離れている地域における利用、公共交通網の路線間の移動、公共交通の営業時間終了後の移動等の実績が確認でき、シェアサイクルが公共交通の機能を補完する役割を担う移動手段であることがわかりました。また、シェアサイクル事業者から提供を受けた移動データを可視化し、Web地図上での一般公開も全国で初めて実施しました。 【46ページ】 地域公共交通を積極的に使う 施策3 利用促進・外出促進 ケ 地域の方々を対象としたモビリティマネジメントの実施 実施主体 ・地域住民、交通事業者、横浜市(都市整備局)、企業・団体等 内容 ・地域の将来を担う、市内の小学生を主な対象に、公共交通の利用など身近な交通・移動の視点から社会課題(環境・福祉など)を考える、モビリティマネジメント出前授業を実施します。加えて、住んでいる地域の交通課題を知ってもらうとともに、子どもの発信力により、家庭や地域住民へ広く情報の伝達を促します。 ・また、自治会町内会や企業等の様々な地域関係者に対し、地域課題や地域交通の運行状況等についての情報発信を積極的に行い、行動変容を促します。あわせて、情報が人のつながりの中で伝わり、共感を介して広がっていくことを促すため、地域の生活者の視点で日常的に支援を行っている社会福祉法人など、地域の関係者との連携を強めていきます。 対象 ・市内全域の小学校、地域等 主な施策の柱 ・バスネットワーク維持 ・地域公共交通の導入 ・利用 外出促進 ・DX GX 共創 スケジュール ・出前授業等モビリティマネジメントの取組拡充(令和7年度~) ・出前授業参加者数の公表(令和7年度~) 【47ページ】 地域公共交通を積極的に使う 施策3 利用促進・外出促進 コ あらゆる世代の外出促進(高齢者・子育て世代等) 実施主体 ・交通事業者、横浜市(健康福祉局、こども青少年局、都市整備局)、企業・団体等 内容 ・高齢者、障害者等の外出促進を目的に、敬老パス、福祉パス、特別乗車券を地域公共交通にも適用します。 ・子育て世代をはじめ多世代の移動に関する課題把握や目的施設と移動サービスとの連携強化など、移動サービスの利便性向上に向けた支援策を検討します。 対象 ・市内全域 主な施策の柱 ・バスネットワーク維持 ・地域公共交通の導入 ・利用 外出促進 ・DX GX 共創 スケジュール ・敬老パス、福祉パス、特別乗車券の地域交通への適用(令和7年10月~)、適用後の効果検証(令和7~11年度) ・生活サービスと連携した誰もが使いやすい交通サービスの利便性の向上(令和7年度~) コラム 「子育てタクシー」の普及促進について ・横浜市では、研修を受けたドライバーが子どもや保護者、妊婦の移動をサポートする「子育てタクシー」について、事業者の負担となっている講習費・登録費等の補助を行うことで、利用エリアを18区に広げるとともに、供給量を拡大し、利用しやすい環境を整えます。また、体験乗車会を開催し、利用者の不安軽減につなげます。 【48ページ】 地域公共交通を積極的に使う 施策3 利用促進・外出促進 サ バリアフリー対応車両の導入及び周知啓発 実施主体 ・交通事業者、横浜市(健康福祉局、都市整備局) 内容 ・車いすのまま乗車が可能なほか、高齢者や妊婦、車いす利用者、障害者等の誰もが利用しやすいノンステップバスやユニバーサルデザインタクシー(UDタクシー)など、バリアフリー対応車両の導入を推進し、誰もが安心して外出できる社会を目指します。 ・ご自身の車いすのままでUDタクシーに乗車することや、障害のある方が付き添いなしでタクシーを利用することなど、安心してタクシーを利用できるよう、乗車体験会の実施などの周知啓発を進めます。また、利用実態の確認や関係者間での共有を進めます。 対象 ・市内全域 主な施策の柱 ・バスネットワーク維持 ・地域公共交通の導入 ・利用 外出促進 スケジュール ・ノンステップバスの導入(継続)  目標 市内導入率80%以上(令和7年度)  (高齢者・障害者等に配慮した路線バス整備事業) ・UDタクシーの導入(継続)  目標 市内を運行する全車両の25%  (タクシー事業者福祉車両導入促進事業(UDタクシー)) ・UDタクシー乗車体験会の開催(継続)  目標 2回/年(令和7年度~) 【49ページ】 地域公共交通を積極的に使う 施策4 交通DX GX 共創の推進 シ 新たな交通サービスの創出 実施主体 ・企業 団体等、交通事業者、横浜市(経済局、都市整備局、道路局) 内容 ・歩行支援型の低速のパーソナルモビリティやグリーンスローモビリティなど新たなモビリティツールを活用し、地域内の回遊性向上や賑わい活性などまちづくりと連携した実証実験などを支援し、実現可能性を検討します。 ・バスやタクシーなど、公共交通の利便性向上や運転士不足の解消等に向け、自動運転技術を活用した実証実験を支援します。 対象 ・市内全域 主な施策の柱 ・バスネットワーク維持 ・地域公共交通の導入 ・DX GX 共創 スケジュール ・新たなモビリティツールや自動運転技術を活用した実現可能性の検討(令和7年度~) ス 移動実態データ等を活用した移動需要の把握と共有 実施主体 ・交通事業者、企業・団体等、横浜市(都市整備局)、地域住民 内容 ・バスや新たな地域公共交通の運行にあたり、民間事業者と連携して移動実態データを取得できる環境を構築し、関係者間で共有して交通サービスの改善や利用促進につなげます。 対象 ・市内全域 主な施策の柱 ・バスネットワーク維持 ・地域公共交通の導入 ・利用 外出促進 ・DX GX 共創 スケジュール ・運行地区における利用実績の公表(継続) ・交通事業者とのデータ共有、活用(継続) ・民間事業者のノウハウを活用した新たな移動・生活実態データの取得・共有(令和7年度~) 【50ページ】 地域公共交通を積極的に使う 施策4 交通DX GX 共創の推進 セ 公共交通のEV化・FCV化、インフラ整備の推進 実施主体 ・交通事業者、企業・団体等、横浜市(脱炭素・GREEN×EXPO推進局) 内容 ・一般的にマイカーに比べて稼働率が高い事業者車両(バス・タクシー等)において、環境配慮型車両(EV化・FCV化)及びEV充電ステーション・水素ステーションの設置を、地域公共交通特定事業(道路運送高度化事業等)も活用し進めます。 対象 ・市内全域 主な施策の柱 ・バスネットワーク維持 ・地域公共交通の導入 ・DX GX 共創 スケジュール ・EV急速充電器の設置(令和6年度~継続)  目標 令和12(2030)年までに市内に400口設置 ソ 共創の取組の推進(社会的課題の解決に向けた企業提案募集) 実施主体 ・企業・団体等、交通事業者、横浜市(都市整備局、政策経営局、経済局) 内容 ・地域や施設との連携による利用促進、魅力向上や技術開発による更なる利便性の向上など、民間企業との連携・共創により社会的課題の解決をより促すため、企業提案を募集し、地域交通の取組に積極的に取り入れます。 対象 ・市内全域 主な施策の柱 ・バスネットワーク維持 ・地域公共交通の導入 ・利用 外出促進 ・DX GX 共創 スケジュール ・提案窓口の設置による提案の募集、実施(令和7年度~) 【51ページ】 第6章 指標の設定 ・計画期間である5年後の令和11(2029)年度に向けて、横浜市全体の地域公共交通の「評価指標」を設定し取組を進めるとともに、各地域単位での「地域の診断の要素」を設けて継続的に取組の効果等を検証するなど、計画として総合評価を行っていきます。   図6―1 評価体系イメージ (1)目標(横浜市全体の評価指標) ・バスネットワーク維持や新たな地域公共交通の導入等の施策・取組による公共交通圏域の維持・拡大、これに伴う市民の外出促進、マイカーから地域公共交通への利用転換など、持続可能な地域公共交通の実現に向け、市全体の目標として評価指標及び数値目標を定め、原則として毎年、継続的に評価を行います(表6-1) 【52ページ】 表6-1 横浜市全体の評価指標・目標値 評価指標 ・駅まで15分達成人口割合 ねらい ・朝夕の通勤通学需要に対応できているか  通勤・通学需要など速達性・利便性の確保  ※現状値:令和6年4月時点 数値目標 ・現状値 92.3% ・目標値 維持 分野 ・定住促進 ・商業 評価指標 ・導入及び維持した路線数 ねらい ・日中のお出かけ時間帯の需要に対応できているか  生活に基本的に必要なアクセス性の確保 ・バスネットワークの維持とともに、交通が不便な地域へ地域公共交通を導入し、市域全体で地域公共交通の充実を図れているか 数値目標 ・現状値 33路線 ・目標値 84路線 分野 ・定住促進 ・商業 評価指標 ・新たな支援地区数 ねらい ・公共交通圏域外において、 地域の取組意向や潜在的な移動ニーズなど、導入の必要性を確認できているか ・運行状況に応じ支援に取り組めているか 数値目標 ・50地区程度 分野 ・定住促進 ・商業 評価指標 ・バス運転士数の充足率 ねらい ・路線バスの維持に必要な運転士数が確保されているか  ※充足率:各事業者の運転士定員に対する運転士数 数値目標 ・現状値 94.3% ・目標値 100% 分野 ・定住促進 ・商業 評価指標 ・外出が増加した地区数 ねらい ・地域公共交通の導入により市民の外出を促せているか  外出促進、健康増進、地域交流の創出等 数値目標 ・目標値 50地区程度 分野 ・医療福祉 ・商業 ・地域コミュニティ 評価指標 ・利用促進に関する取組件数 ねらい ・地域公共交通への支援を通じて、関係者間で理解を深め、取組の裾野が広がっているか  ※現状値は現行中期計画の数値 数値目標 ・現状値 52件/年 ・目標値 増加 分野 ・教育 ・福祉 ・地域コミュニティ 評価指標 ・公共交通分担率 ねらい ・マイカー利用から地域公共交通利用(自転車含む)への転換を促せているか  Co2削減、交通事故減少、最寄駅周辺の活性化 (把握方法:パーソントリップ調査(令和10(2028)年度実施、令和11(2029)年度公表見込み)を用いて評価を想定) 数値目標 ・現状値 50.2% ・目標値 増加 分野 ・環境 ・交通安全 ・商業 【53ページ】 (2)地域の診断の要素(各地域単位での評価指標) ・地域公共交通の取組前後における目的地までのアクセス性の変化や利用状況の変化など、地域ごとに異なる多様な実態を関係者とともに捉えながら、地域の現状を診断し、その地域に適した施策を推進していく必要があるため、各地域における診断の要素を設定し、原則として毎年、継続的に評価を行います。 ・その中で、健康増進や地域交流の創出など波及効果も含めて検証し、取組の有効性についても評価を行います(表6-2)。 【54ページ】 表6-2 各地域における診断の要素 段階 ・取組前 現状診断 診断の要素 アクセス性 ・最寄り駅及び生活利便施設等への移動負担の程度(距離、所要時間、利用料金など) 把握方法 ・統計データ等の活用 地域特性 ・人口構成(年少、生産年齢、高齢者人口) ・標高差 ・道路情報(幅員、勾配等) ・周辺の公共交通の情報 把握方法 ・統計データ等の活用 生活実態 ・波及効果で捉える事項の現状把握 把握方法 ・アンケート調査 ・実態データの取得 段階 ・取組後 直接効果 評価時期 ・原則年1回 診断の要素 ・運行によるアクセス性の変化 ・物理的な変化(駅・バス停の距離)  公共交通圏域の変化割合(面積、カバー人口など) 評価方法(例) ・公共交通圏域のカバー人口変化 〇人から〇人 把握方法 ・統計データ等の活用 診断の要素 ・時間的な変化(駅や生活利便施設までの時間) 評価方法(例) ・〇分から〇分 把握方法 ・統計データ等の活用 診断の要素 ・運行本数 評価方法(例) ・〇便/日 把握方法 ・利用状況データの取得 診断の要素 ・利用状況(利用者数、利用傾向、頻度 等) 評価方法(例) ・〇人/日 把握方法 ・利用状況データの取得 診断の要素 ・運行収支(運賃収入、運行経費、補助金交付額 等) 評価方法(例) ・運行経費〇円 ・運賃収入〇円 ・補助金交付額〇円 把握方法 ・利用状況データの取得 診断の要素 ・その他、地域固有の指標(例 商業施設等の来場者数、地域イベント参加者数) 把握方法 ・利用状況データの取得 診断の要素 ・外出頻度の変化(外出頻度、外出意欲) 評価方法(例) ・地区内で変化した人の割合+〇% 把握方法 ・アンケート調査又は効果分析が可能なデータの取得 段階 ・取組後 波及効果 評価時期 ・運行後、3年目、5年目、時点など 診断の要素 ・人との関わりの変化(家族、友人との交流、地域活動への参加、社会活動) 評価方法(例) ・地区内で変化した人の割合+〇% 把握方法 ・アンケート調査又は効果分析が可能なデータの取得 診断の要素 ・ウェルビーイング(健康状態の変化、生活満足度の変化) 評価方法(例) ・地区内で変化した人の割合+〇% 把握方法 ・アンケート調査又は効果分析が可能なデータの取得 診断の要素 ・マイカーの利用頻度の変化 評価方法(例) ・地区内で変化した人の割合+〇% 把握方法 ・アンケート調査又は効果分析が可能なデータの取得 診断の要素 ・高齢者の免許返納割合の変化 評価方法(例) ・地区内で変化した人の割合+〇% 把握方法 ・アンケート調査又は効果分析が可能なデータの取得 【55ページ】 図6-2 診断の要素の例:買物施設(スーパーマーケット)まで30分圏域 【56ページ】 コラム 日常生活の移動に関するアンケート調査を実施しました 調査目的 ・市民の皆さまの日常生活における移動手段、困ることや不便なことについてお伺いし、地域公共交通の利用状況等を把握することを目的にアンケートを実施しました。 調査概要 ・実施期間 令和6年10月11日(金)から10月21日(月)まで ・回答者数 953人(市内に在住・在勤・在学する方) ・設問例 外出頻度 ・週3日以上外出する人は全体の8割を超えている 外出先への移動での困りごと ・お困りごとがある方は、今後が不安な方も含めると全体の6割を超える その他 主に利用する移動手段、現在の公共交通の満足度 など ・引き続き、市民のみなさまの地域公共交通の利用状況等を把握し、地域公共交通の取組評価の参考としていきます。 【57ページ】 第7章 国庫補助事業の活用 (1)考え方 ・地域公共交通の充実に向けては、本市の各種支援制度に加え、国庫補助事業を有効活用するなど、関係者で連携して取組を進めていきます。 (2)活用の方向性 ・地域交通サポート事業に代わる新たな制度「横浜市みんなのおでかけ交通事業」により導入する路線や、地域や事業者等の運営努力だけでは維持が難しく新たに補助金を交付する路線(図7-1)について、国の指定する交通不便地域の解消に資する路線である場合、地域公共交通確保維持改善事業の「地域内フィ―ダー系統確保維持費国庫補助金」を活用し運行を維持・確保します。また、生活交通バス路線維持制度により運行を維持している生活交通バス路線(図7-2)についても、同補助の活用を図ります。 ・民間企業による交通DX・GX・共創の取組(自動運転、MaaS等)や交通事業者による公共交通のバリアフリー整備等においても国庫補助事業を活用し、取組を推進します。 【58ページ】 図7-1 これまでに導入した地域公共交通の例 ・こすずめ号、四季めぐり号 【59ページ】 図7-2 生活交通バス路線図(令和7年3月時点) 【60ページ】 第8章 推進体制 ・本市の目指す姿の実現に向けた取組を着実に推進するため、地域住民、交通事業者、横浜市といった関係者が、それぞれの役割のもと連携して地域公共交通を支えていきます(図8-1)。さらに、様々なノウハウ、知見、技術を有する企業や地域に身近な団体等の参画を促し、その実現性、持続性を高めていきます。 図8-1 連携体制イメージ ・交通事業者、地域住民、企業団体等、行政の多様な主体が参画し地域公共交通をみんなで支える ・また、地域住民・交通事業者・行政・学識経験者といった関係者で構成される「横浜市地域公共交通活性化協議会」を毎年度開催し、継続して本計画に位置づけられた取組の報告や意見交換を行えるよう、運営していきます(図8-2)。 ・計画の指標に基づき毎年度各取組の進捗管理・評価検証を行いながら、計画期間の5年目を目途に取組全体の総合評価を行い、計画の見直しについて検討を進めていきます。 図8-2 協議会の体制図 横浜市地域公共交通活性化協議会 ・交通政策の理念と目標を共有 ・交通施策のあり方・方向性の意見交換 ・地域公共交通計画の作成、施策実施状況、指標モニタリング 地域公共交通会議 ・地域交通の実務的内容の協議(運行計画案・運行実績、運賃等) ・走行環境整備事業、バスネットワークの構築 バス交通部会 ・路線バスの維持・活性化 福祉有償移動サービス運営協議会 ・福祉運送の実務的内容の協議(区域、対価等) 鉄道部会 ・鉄道事業者と調整・意見交換 【裏表紙】 横浜市地域公共交通計画 令和7(2025)年4月 横浜市都市整備局交通企画課 〒231-0005 横浜市中区本町6丁目50番地の10 TEL 045-671-2021 FAX 045-663-3415