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Instagram過去の投稿(2025年)
最終更新日 2025年6月6日
5月
5月23日
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『6days遭難者たち』安田 夏菜/著 講談社
新聞記事のような表紙。よく見ると、緊迫感のある見出しで、ある遭難事故について伝えられています。
タイトルからもわかるように、今回紹介する本は、この事故に遭ってしまった3人の女子高生の物語です。
大した装備も持たず、地元の山で遭難してしまった彼女たち。記事では、県警の救助隊が捜索中だと伝えられていますが、壮絶な状況を過ごす彼女たちは、果たして生きて帰れるのでしょうか。
美玖(みく)・亜里沙(ありさ)・由真(ゆま)は、高校1年生。
元山岳部の美玖に亜里沙が声をかけたことで、日帰り登山の計画が持ち上がり、そこに、美玖と仲のよい由真も誘われました。
3人が山に挑戦するのには、ある共通する理由がありました。亡くなった祖父との約束、母親の乳がん再発への不安、母親の再婚で出来た家族との関係。性格も家庭環境も異なる3人は、心に重くのしかかる、「家族」への複雑な想いからの解放を求めて山を登ります。
美玖が、地元の山の比較的易しいルートを設定したので、登頂までは予定通りでした。帰りの電車までの時間を持て余し、予定外の道を進んだことで帰り道を見失います。そこから冷静な判断を失いパニックになったことで、更に山奥へ迷い込み、遭難してしまうのでした。
食糧が減り、体力が失われます。雨風に晒されての野宿では、暗闇が精神を蝕みます。更に、体力の低下は体調不良へと繋がります。
ごまかさずに言うと、特に後半の展開には怪我や出血を伴うシーンもあり、つらい描写が続きます。
それでも、3人それぞれの視点で語られる、「死にたくない」と生にしがみつく姿は、命の尊さや力強さを伝えてくれます。
5月9日
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『〈弱いロボット〉から考える』岡田 美智男/著 岩波書店(岩波ジュニア新書)
その辺にあるようなランドリーバスケットに車輪がついただけの「ゴミ箱ロボット」はヨタヨタと歩くだけ、自分ではごみを拾えません。昔話を語ってくれるロボット「トーキング・ボーンズ」は途中でお話を忘れてしまいます。
岡田さんはそんな「弱い」ロボットを作っています。
人が手伝ってあげないといけないロボットなんて、役に立つの? と思いきや。
「ゴミ箱ロボット」がうろうろしていると、「しょうがないなあ」と子どもたちがやってきて、ゴミを入れてくれます。「昔ばなしロボット」が言葉に詰まっていると、「こういう話じゃない?」とみんながツッコミをいれて、お話ができていきます。
これにはロボットもにっこり……はしないけれど、手伝ってあげた周りの人たちがにっこり。
頼りないロボットが、私たちを頼りがいのある存在にしてくれる。
「ひとりでできる!」とがんばっても、ひとりでできることなんて限りがある。だったら、「ひとりじゃできない、助けて!」といろんな人を巻き込んだほうが、大きなことができる。
それってもしかして、人間も同じ……?
みんなが幸せになれる社会のヒントを、弱いロボットが教えてくれます。
4月
4月25日
4月25日の投稿画像1
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『思いはいのり、言葉はつばさ』まはら 三桃/著、まめふく/装画 アリス館
中国で暮らす少女・チャオミンは、運命的な出会いをしました。友人のハンカチに、見たことがない美しい模様が刺繍されていたのです。その模様は、「女書(ニュウシュ)」と呼ばれる文字でした。
チャオミンは女書を習い始めます。この時のチャオミンは10歳になったばかり。文字というものがあることは知っていましたが、文字を書くのは初めてです。お手本を見て書いてみても、同じようにうまくは書けません。墨はにじむし、形も揃わないし……。でも、初めて自分で文章が書けたときの喜びは、今まで感じたことがないほど大きいものでした。
夜に書いた手紙を朝読んだら照れくさい言葉の連続で恥ずかしくなったり、友人と手紙のやり取りをしてもっと仲良くなったり……チャオミンは「書く」ことで初めての経験をします。その経験一つ一つが、チャオミンの世界を広げる手助けをしてくれます。
普段何気なく書いたり読んだりしている手書きの文字が、ぐっと魅力的に感じられる物語です。
読み終わったら、あなたも何か書きたくなるかもしれません。
本の見返し(表紙をめくった時に見える部分)には、女書がデザインされています。ぜひ、チャオミンが感じたときめきを体験してください。
4月11日
4月11日の投稿画像1
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『数学者たちの黒板』ジェシカ・ワイン/著、徳田 功/訳 草思社
中高生の皆さんにとって、黒板は板書を写すためのもの、あるいは休み時間に落書きをして楽しむものでしょうか。
担当は学生から社会人になって、黒板に触れる機会がすっかりなくなってしまいましたが、数学者と呼ばれる人たちは大人になってからも黒板を愛用しているようです。
本書は、世界中の数学者たちが書いた黒板の写真と彼らによるエッセイを集めた本です。
板書の内容は様々で、整然とした数式や殴り書きのような図形……。書いてある内容は担当も全く理解ができませんでしたが、芸術作品を見ているような気持ちにさせてくれます。(2歳の娘が書いたという落書きまでもがそう見えてきます!)
写真と一緒のエッセイも花を添えています。「研究室の同僚が日本製の上質なチョークをプレゼントしてくれて感動した」「自分が発表した研究が全く門外漢の物理学に応用されていることを最近知って驚いた」といった人柄を感じるエピソードも面白いです。
3月
3月28日
3月28日の投稿画像1
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『推しにささげるスイーツレシピ』メリリル/著 グラフィック社
いまや辞書にも掲載されるようになった「推し活」。
とはいえ、推しへの愛の形は人それぞれ。ライブ現場に行ったり、グッズを集めたり、絵や文章をかいてみたり、ぬいぐるみやフィギュアを自力で作ってみたり……数ある中から、楽しくおいしい推し活の本を紹介します。
カラフルなスイーツを作れるレシピブックで、思いどおりの色を作るためのヒントがたっぷり詰まっています。
ラベンダーやミントグリーン、パステルピンクなど、絶妙なカラーが推し色の人こそ、手作りがぴったりかも。
不器用さんでもご心配なく!
市販のお菓子にひと手間加えるだけのレシピもたくさん紹介されています。
お菓子作りが好きな人は、誕生祭のお祝いに使える記念日ケーキにチャレンジしてはいかがでしょう。
色々なメニューを作れるので、コラボカフェごっこもできそうです。
メンカラ青の推しを持つ自分は「推し色ドリンク」が気になりました。
青い食べ物を探してもなかなか見つからないのですが、ドリンクなら料理が苦手な自分でも可愛く作れそう……
次の誕生祭に作ってみます!
みなさんも、ぜひこの本を読んで推し活を満喫してください。
3月14日
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『オタクを武器に生きていく』吉田 尚記/著 河出書房新社
大好きなことを仕事にしたい!
それはまさにオタクの、いや多くの人の夢。
でも、好きなことだけして生きていくのは無理?
著者はオタクで知られるアナウンサー。
まさに趣味を仕事にした著者が、「オタクを武器に生きていくにはどうしたらいいか」先輩たちに聞いて回ります。
声優、アニメプロデューサー、ダンサー、IT批評家。
それぞれ分野も経歴も違うのに、皆さん、不思議と共通点がある。
著者が導き出した「この道」で生きていくための攻略法とは?
ポイントは「なりたい」ではなく「やりたい」ことを重視すること。
たとえば「声優になりたい」のか「声優をやりたい」のか、ここには大きな違いがあります。
声優のどんなところに惹かれる?声優になって何をやりたい?
それをつきつめていくと、きっと自分の進む道が見えてくる、はず。
2月
2月28日
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『解きたくなる数学 』佐藤 雅彦/著、大島 遼/著、廣瀬 隼也/著 岩波書店
この本は、一風変わった数学の問題集です。
目の前にあるのは、問題文と一枚の写真。それから、問題を解く手助けをするキーワード。
複雑な公式を覚える必要はありません。長い途中式を書く必要もありません。ただ、問題を様々な角度から考えます。
この本の一番の特徴は、チーズ・硬貨・道に敷いてあるタイルなどの身の回りにあるものが問題に使われていることです。
その理由について、著者の一人である佐藤 雅彦さんは、「現実の世界に数学の問題がデザインされるとひと目で問題の意味が分かる。ひと目で問題を解きたくなる。」(p.130)と書いています。
問題を単純化したり、与えられた条件から何がわかるかを探したりするうちに「こうやって解けばいいのか!」と道筋が見える瞬間があります。
例えば、台形のチーズを4つに切り分けて、そのうちの2つの大きさを比べる問題があります。このチーズは双子の兄弟のもので、二人とも同じ大きさのチーズを食べたいと言っているのです。よく数学の問題集で見かけるような形式なら、台形に線を引いて、出来上がった図形の面積を比べる問題になるでしょう。しかし、「双子の兄弟とチーズ」で問題を現実世界にデザインすることで、「解きたくなる」魅力が生まれるのです。デザインの効果、恐るべし。
さて、そろそろ表紙がどんな問題か気になる頃だと思います。ページをめくって、1問だけでも挑戦してみてください。
2月14日
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『ケーキ王子の名推理(スペシャリテ)』七月 隆文/著 新潮社(新潮文庫)
2月14日の今日は、バレンタインデー。
おいしそうなチョコレートがたくさん並んでいて、「誰にあげようか」「誰からもらえるか」「いっそ自分で買っちゃおうか」なんて考えてドキドキしちゃいますよね。
そんな今日にぴったりの、恋もスイーツも摂取できる本を紹介します。
物語の舞台は自由が丘、主人公の未羽(みう)が彼氏に振られたところから始まります。
ケーキを食べて元気を出そうとふと立ち寄ったケーキ屋「Mon Seul Gâteau」では、なんと同じ高校の「王子」、颯人(はやと)がパティシエ修行をしていました。
女子に対して冷酷という噂どおり、秘密を知った未羽に対しても冷たく毒舌な颯人ですが、お菓子作りには超真剣で熱い一面が。
とにかくケーキが大好きな未羽と本気でパティシエを目指す颯人の2人が、降りかかるトラブルや周囲の恋の悩みをスイーツの力で解決していきます。中にはバレンタインのエピソードもありますが、甘いだけが恋ではなく…。
各章の最後にはキーとなったケーキの豆知識とおいしいお店が紹介されていて、読んでいるとだんだんケーキが食べたくなってきます。
本の内容とケーキを2度味わってみてください。
さて、昨年夏に発売された第7巻をもって完結した『ケーキ王子の名推理』シリーズ。
ミステリー要素だけでなく、未羽と颯人、2人の関係にも目が離せません。
1月
1月24日
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『檸檬』梶井 基次郎/著 新潮社(新潮文庫)
“『檸檬』……、教科書に載ってた?”なんとなく『檸檬』を遠巻きに見ながら、読んでない人は多いかもしれません。でも、この本を熱烈に推す人もいます。あなたはどっちですか?
私は高校生の頃にちょっと読み、「自意識過剰な人ばっかり」と思い、敬遠してきました。
今回、この本を改めて読んでみると……面白い。
短編集なので気軽に読めるのもよいところ。最初の「檸檬」で「わーだめだ」と思った人はほかの短編を試してみてはどうでしょう?
私が面白いと思った作品の一つが「路上」という短編です。
よく知っている場所から少し外れた見知らぬ道を歩いているうちに「……変なところを歩いているようだ。何処か他国を歩いている感じ」(本文p.81)みたいな気持ちになることってありませんか?
この短編では、主人公は自分が発見した「見知らぬ道」をさまよううち、雨上がりで足元が悪い崖をずるずると滑り落ち、下に着いた瞬間、「誰かこれを見ていなかったか」と2回辺りを見回します。主人公の自意識過剰な感じは相変わらずなのですが、ラストの「自分、自分という意識というもの、そして世界というものが、焦点を外れて泳ぎ出していくような気持ちに自分は捉えられた。」(本文p.84)というセリフにあるように、この短編集全体が“今ここにいることの不確実な感じ”というトーンに貫かれているようです。
ちなみにとても有名なフレーズ「桜の樹の下には屍体が埋まっている」も「桜の樹の下には」という短編の一文です。
この本の持つ、イメージを喚起するパワーを感じてみませんか?
1月10日
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『恋愛相談 「好き」だけじゃやっていけません』森川 成美/作 静山社
先月のこと、「たまには、キラキラしたラブストーリーを紹介しよう!」と、本棚を眺めていると、このタイトルが目に留まりました。
手に取り、かわいいカバーイラストに「この3人が、恋バナを相談し合う話かも」と期待を胸に、ページをめくっていきました。
それが大きな見当ちがいだとも気づかず……。
高校1年生の美鳩(みはと)のクラスは、文化祭で「人生相談」をすることに。ある先輩から受けた「彼氏は自分のことを本当に好きなのだろうか」という悩みに上手く答えられなかった美鳩でしたが、その後、先輩が彼氏と仲良くしている姿を見かけ胸をなでおろしました。
ところが後日、校内にサイレンが響き渡ります。
先輩はパトカーに、彼氏は救急車に乗せられ、翌日の新聞では「カッターでの傷害事件」と報じられました。
ちゃんと相談にのっていれば……と思った美鳩は、一緒に相談を受けていたゆき・アイと共に、「AYUMI恋愛相談室」をつくります。
しかし、そこに寄せられるのは、甘い話だけありません。それどころか、新たな事件に発展しそうなものまで舞い込んでくるのでした。
ここまで読み進めた私は、「あっ、これ違うな…」と気づきました。そう、この小説には心ときめく恋愛は出てきません。
その時点で、別の本も探せたでしょうが、私は序盤の衝撃展開から目が離せなくなっていたのです。
そうして結末まで読み終えた頃には、この本を「恋愛小説」として紹介したいな、と思うようになっていました。
大人になってしまった私と10代の皆さんでは、この本への捉え方は異なるでしょうか。
読んだ人の感想を聞いてみたい、と思える1冊でした。
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