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ぐるっとSTORY(2025年夏号)

最終更新日 2025年7月22日

ぐるっとSTORY(2025年夏号)イメージ

「お仕事ステーション」では、地下鉄やバスで働く人たちを紹介しています。日常生活のなかではなかなか知る機会のない、市営交通の裏側にフォーカスした本連載。誌面に入り切らなかったインタビューをWEB限定記事としてお届けします! 今回は、港北営業所で働く操車係のAさんへのインタビューです。

バス乗務員のよきパートナー
「これが思い出のナンバリング9-1636の車体」とバスの前で笑顔を見せるAさん。バス乗務員をしていたころ、先輩が乗っていた思い入れのあるバスなのだそうだ。操車係のAさんは2020年入局。バス乗務員として4年間勤めるあいだに、2023年以降は少しずつ操車係の代務を担当。そして、2025年4月から本格的に操車係の勤務がスタートした。


思い入れのある車体と写真に写るAさん。バス正面の右側に9-1636のナンバリングがある

操車係とは、実際にハンドルを握る乗務員の勤務シフトを作成し、運行するバスの車体を決定する仕事だ。「乗務員がすこしでも気持ちよく働けるように」──。乗務員と操車係の両方の経験をもつAさんは、日々その思いを胸に業務に心を砕いている。
勤務作成において重要となるのが「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準(通称、新改善基準)」という、昨年4月から適用された制度だ。勤務終了から次の勤務開始までの休息時間の下限を8時間から9時間に増やし、可能な限り11時間空けるよう努めることが定められるなど、バス乗務員の働き方が変わった。
くわえて、全国的にニュースとなっている「バス乗務員不足」は交通局も例外ではない。「新改善基準適用以降はいままでのようにシフトを組めないこともあった」と仕事の難しさを振りかえるAさんだが、お客さまのためにも工夫を凝らして、なんとか日々乗務員を確保し、バスの運行を守り切っている。


勤務作成はパソコンの専用ソフトで行う。「乗務員にとってこれで働きやすいのか」と自問自答を繰りかえすという

それだけでなく、Aさん独自のこだわりも。乗降者数の多いラッシュの時間帯には乗り降りの時間を縮められるように座席が少ない車両を、高齢の方が多い路線には安全に座れるように座席が多い車両を配置。桜が咲く季節には、お花見スポット周辺に桜の装飾バスを走らせるなどの心配りも。「ほとんど自己満足ですけれど」と笑うAさんだが、乗務員時代の経験と土地勘が生きているのだという。
自分の乗務員時代を「法令さえ守ってくれれば、どんな路線や時間帯でも勤務シフトを受け入れるタイプだった」と振りかえるAさん。それもあってか、操車係になってすぐは乗務員それぞれの個性に驚いて戸惑うこともあった。その人が得意とする時間帯や路線も千差万別。だからこそAさんは、乗務員と顔を合わせるたびに、その人の労働時間の状況や体調を気にかけ、個々に合わせた働き方を考える。
「次に会ったときに乗務員の体調不良や事故もなく帰ってきてくれると、それだけで十分にうれしいことです。逆に体調を崩してしまったという話を聞けば『もっと何かできたのでは』と、自分に直接的な原因がなくても残念な思いになります。乗務員が『ありがとう』と声をかけてくれたときは成功したのかなと思いますね」
約180人いる営業所の乗務員の状況を、たった3人の操車係で把握する。それは決して容易なことではないだろう。先輩や上司との連携を密に取りながら日々の仕事をこなしている。

あいさつは必ず。ハンドルを握るのは一人ひとりの乗務員
そんなAさんが、先輩や上司から徹底するようにと言われつづけていたことがある。「一番はあいさつです。勤務を作成するときにはパソコンのソフトを使いますが、実際に仕事をしてくださるのは一人ひとりの乗務員です。彼らが目の前を通れば何回でも『お疲れさまです』と言いますし、『長時間のお仕事をありがとうございました』と付けくわえます。操車としての前に、人として、ですね」
一日の勤務時間で、忙しい乗務員とコミュニケーションをとれる時間は長くない。そんな限られた時間のなかでも労いの言葉をかけるのは欠かせない。取材に同席したAさんの上司も「本当に大変な仕事。助役への登竜門ですね」と表現するこの業務だが、Aさんは喜びを見つけているようだ。
「自分がお願いした勤務や車体で、その日の港北営業所エリアのバスが動き、お客さまが乗ってくれる。それが何も代えられない喜びかなと思います。休みの日でも市営バスの接近情報を公式HPで見て『あ、このバスがここを走っているな』とチェックしてしまうこともあります。お客さまには見えない仕事かもしれませんが、それが楽しいですね」


インタビュー中のAさん。「乗務員がいかに気持ちよく勤務に出て、帰ってきてくれるかが大事」と常に乗務員ファーストだ

次の150年へ
「なぜ、交通局のバス乗務員になったのですか?」。この質問にAさんは幼いころの思い出を振りかえって答えてくれた。
Aさんの祖父も父も交通局で乗務員を務め、父はいまだに現役。小さなころから大きなバスを運転する姿を間近で見つめて憧れを抱いてきた。「いずれは祖父と父もいる交通局に入りたい」。そんな思いをもちながら望みを叶えて交通局に。乗務員を経て操車係になったいま、次に描いている目標はどんなものだろうか。
「個人的な思いになってしまいますが、祖父・父と私の勤務期間を通算すると私が定年退職するころには100年ぐらい交通局にお世話になることになります。交通局が150周年を迎えるまで勤め上げるのが私の目標です。私がいま31歳だから、定年までまだまだ長い。焦らず慌てず、まずは操車の仕事を確実に覚えたいですね」
「一つひとつ確実に」。そんなふうに話す言葉からは交通局の長い歴史と信頼、Aさんの高い志が伝わった。

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