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3月号 春はすぐそこ!「横浜自然観察の森」森歩きレポート

最終更新日 2024年3月1日

 横浜は、人口380万人を有する大都市でありながら、実は緑あふれる、自然豊かなまち。春の兆しが待ち遠しいこの頃、横浜市最大の森の一角にある「横浜自然観察の森」(外部サイト)に行ってきました。

自然観察の森とは

 自然観察の森とは、身近な自然の喪失が進む大都市やその周辺部に、野鳥や昆虫をはじめ身近な自然とふれあえる場所を整備し、自然観察などを通じて自然を保護することを目的として環境省の主導により整備された施設です。全国で10箇所が各自治体により整備され、管理・運営しています。
 「横浜自然観察の森」は日本で初めての自然観察の森として、円海山周辺にある約700ヘクタールという市内最大規模の緑地の南端に1986年に開園しました。周辺には、宿泊できる「上郷・森の家」や、コアラやオカピのいる「金沢自然公園(金沢動物園)」があり、隣接する市民の森も含めてハイキングコースでつながっています。小さいお子さんから高齢者の方まで、幅広く楽しむことができます。

横浜には市民の森もあります

 そして横浜には、この他にも、市独自の制度に基づき保全している「市民の森」が47か所あります。その広さを合計するとなんと約553ヘクタールにものぼります。1986年からスタートしたこの制度により、緑を守り育てるとともに、山林所有者の方々のご協力により、市民の憩いの場としても利用させていただいています。
 「横浜自然観察の森」も、「市民の森」も、ともに横浜市のほか、愛護会や森づくりボランティアの皆さんの活動によって維持管理されています。そして、これらの森では、来場された人が自然に親しみ、森の生き物を学ぶきっかけとなるよう、各種イベントも開催されています。

市民の森一覧はこちら
市民の森でのイベントなどはウェルカムセンターにてご確認ください。

バードウォッチング体験をしてきました

 2月の休日、「横浜自然観察の森」でバードウォッチングのイベントに参加してきました。木々の葉が落ちる冬は、枝にとまる鳥の観察には一番良い季節とのこと。楽しみに森へ向かいました。
 この日は38名の参加があり、主催するボランティアの方が12名同行してくださいました。受付をすませると、双眼鏡と野鳥観察のハンディ図鑑を貸してくださいました。一緒に配布された野鳥チェックリストを持って、4グループにわかれ、いざ出発です。


野鳥チェックリストとハンディ図鑑を持って出発です

 まずはボランティアスタッフの水上さん、自然観察の森のレンジャー岡本さんから、バードウォッチングにあたっての注意点や、双眼鏡の使い方を教えていただきます。

 鳥をみるときは、肉眼で鳥の位置を確認してから双眼鏡をのぞくのがコツだそう。最初は初心者でも使いやすい8倍から使用するとよいそうです。
 次に、この自然観察の森でこの時期みられる鳥をご説明いただきました。

 まずはアオジ(外部サイト)


【アオジ】
円錐形のくちばしで草の種子を食べる。秋冬は群れることが多い。尾の両側が白く、飛ぶと目立つ。胸から腹が黄色にまだら模様で、チッとするどい声で鳴く。

 冬はこの森にいて、夏になると長野県の軽井沢、上高地などの山地や北日本などの涼しい地域に渡っていきます。冬の長い時期この森にいるので、比較的人に慣れており、人が寄っても動かず、観察しやすいとのことです。

 また、運がよければみられるのがホオジロ(外部サイト)ジョウビタキ(外部サイト)。ジョウビタキは住宅街でもみられるそうです。


【ホオジロ】
腹が茶色で、チチッまたはチチチッと短くつづけて鳴く。スズメより長めの尾で、顔に黒白の模様(雌は黒い部分が褐色)。


【ジョウビタキ】
翼に白い斑、雄は胸から腹が橙色。林の周辺、河川敷、空き地など、やや開けた環境を好み、一羽でいる。時々ぴょこんとおじぎをして尾をふるわせる。澄んだ声でヒッヒッ、時にカッカッと鳴く。


ジョウビタキメス


【エナガ】
白っぽい小さな体に長い尾。チー、ジュリジュリと独特な鳴き声。北海道の亜種、シマエナガはぬいぐるみなどでも人気ですが、顔に模様がありません。


外来種であるコジュケイ(外部サイト)。大正時代に中国南部から狩猟用に移入された鳥。チョットコイと大声で鳴くそう。
この鳥のなき声を人の言葉に置き換えることを「ききなし」というそうです。


【コジュケイ】
キジ科の鳥。キョ、キョと繰り返したり、ピョーという大きな声で鳴くことも。


【シジュウカラ】
白いほお、胸から腹にネクタイ模様(太い方が雄)。
チッチー、ジュクジュクと独特な鳴き声で、住宅地でもよくみられますよね。

 この森では一年を通して様々な種類の鳥を楽しむことができるそうですが、出会えるかは時の運。会えるといいなと祈りながら歩を進めます。

 
 歩いていると、木の高いところに巣が多くみつかりました。鳥の巣かと思って期待したら、なんと外来種のタイワンリスの巣。

 鳥の巣は枝だけで作ることが多いそうなのですが、巣に葉っぱもついていて、枝が密に張り巡らされているのはタイワンリスの巣とのこと。自然の森でもタイワンリスの被害は大きく、木の皮をかじって剥いでしまうため、木が枯れてしまうそうです。何年もかかって大切に守り育てた木が、リスに皮を剥がれることで、水分を保持できなくなり、枯れていく。森を歩く中で、木肌が白くむき出しになっている木、枯れて朽ちた木をたくさんみかけました。森の被害を深刻に感じる光景でした。


 そうしているうちに、空に鷹の仲間、ノスリ(外部サイト)がやってきました。


【ノスリ】
カラス大で、トビより色が薄く、ずんぐりした感じで、トビより短い丸尾。飛翔時、翼の下面と腹の下部に黒っぽく見える部分がある。停空飛翔をし、急降下をしてネズミなどを捕る。主に繁殖期にピーエーとなく。


羽の両端が茶色で、腹部にチャンピオンベルトのように模様があるそう。扇形の尾羽が特徴だそうです。
トビとの見分け方を尾の絵を見せながら教えてくださいました。


尾の形がトビは角尾、ノスリは丸尾


 おなじみのカラスもやってきましたが、よくみられるカラスは2種類。

 左側の絵がハシブトガラス。カーカーと澄んだ声でなき、街中でもよくみかけるカラスです。やや大きく、額がでっぱってみえるのが特徴です。
 右側の絵がハシボソガラス。ガーガーと濁った声でなくそうです。農地や河川敷のような開けた環境を好み、ハシブトガラスよりくちばしが細いのが特徴。
 ハシブトガラスにとって、高いビルが多い街中は、視覚的に森の中と環境が近いという説があり、みなとみらいのような大都市でも観察できます。たくましいですね。

 また、この日は、池でヤマアカガエルを見ることができました。山から降りてきて、池に産卵しているとのこと。卵もみることができました。


ヤマアカガエル


アオジをカメラにおさめることができました!


子供たちも真剣に観察していました


 そして鳥は鳴き声でも楽しめます。
 姿はなかなか確認できないけれど、この日も森の中でたくさんの鳥の声を聞くことができました。
 ギーギーと聞こえる声は、コゲラ。日本で一番小さいキツツキだそうです。


【コゲラ】
太い木や古い木があれば、住宅街や公園でも見られる。ギーという声の後に、キッキッキッと続けて鳴くこともある。
シジュウカラ科の群れの後に1~2羽でいることがある。雄は後頭部に小さな赤い斑があるが、見えないことが多い。


 「ゲラ」と名前につくのはキツツキの仲間とのこと。この森には他に緑色のアオゲラがいるそうです。ちなみに、緑色の鳥には「アオ」と名を付け、青色の鳥には「ルリ」と名付けるそうです。青がきれいなルリビタキという鳥も。
 また、ホーホケキョというなき声で有名なウグイスですが、ホーホケキョとさえずるのは雄だけとのこと。この森では、2月中旬から夏にかけてさえずりを楽しめるそうです。

 
 歩くこと約2時間、スタート地点に戻り、全グループで今日みた鳥、鳴き声を聞いた鳥を確認する「鳥合わせ」を行いました。
 今日確認できた鳥は、23種類!
 姿が見られなかった鳥もあり、見ることができても写真におさめるのは難しかったですが、楽しく鳥を学ぶことができました。


4グループ集まって鳥合わせをしました

この日出会えた鳥

キジバト、カワウ、トビ、オオタカ、ノスリ、カワセミ、コゲラ、アオゲラ、ハシブトガラス、ヤマガラ、シジュウカラ、ヒヨドリ、ウグイス、メジロ、アカハラ、ツグミ、ハクセキレイ、カワラヒワ、ウソ、アオジ、コジュケイ、ガビチョウ、ソウシチョウ、ドバト(24種)

自然観察の森の鳥について

 観察の森では、これまでに150種類以上の鳥が確認されています。その中には、1年中この森にいる鳥だけではなく、ツバメのように季節によって遠くから渡ってくる鳥、渡りの途中にたまたま立ち寄る鳥もいます。この森では開園した1986年から毎年、季節ごとに鳥の調査をして、種類や数を記録しています。鳥を調べ続けることは、自然の変化を知ることにつながります。
 森で鳥を見たいと思ったときには、もちろん一人でもチャレンジできますが、こうしたバードウォッチングのイベントで詳しい人に教わるのが一番。毎月開催していますので、ぜひご参加ください。

レンジャーさんたちにインタビュー

 今回、バードウォッチングでガイドしてくれたのは、ボランティアの水上さん、前田さん、そして自然観察の森のレンジャー、岡本さん。
 自然観察の森には、自然や生き物の専門知識をもった公益財団法人日本野鳥の会のレンジャーがいます。レンジャーは、園内の自然についての質問に答え、解説を行なったり、来園者の安全を守り、誰でも安心して観察ができるような整備も行ってくださっています。生き物を守るための調査や管理も行っています。


写真左から 前田さん、水上さん、岡本さん

前田さん
「山登りが好きで、よく山にいくうちに、あの鳥は何の鳥だろう、あの鳴き声は何の鳥だろうと鳥に興味を持つようになり、このボランティアスタッフとしてお手伝いするようになりました。」

水上さん
「昔から鳥に興味があり、自然観察の森のバードウォッチングイベントなどに参加する側だったのですが、だんたんと楽しさが増して、イベントを運営する側になりました。自然観察の森は横浜でも一番大きな森で、大都市の横浜にこんな自然が保全されているということは素晴らしいことだと思います。是非皆さんもバードウォッチングにいらしてください。」

岡本さん
「小さい頃インコを飼ったことがきっかけで、鳥に興味をもち、現在は日本野鳥の会で、この自然観察の森のレンジャーとして活動しています。自然観察の森も開園して38年になり、木々もしっかりと育ち、立派な森になりました。リスなど外来種の被害が心配されますので、どうかリスなどを見かけても餌をやらないでください。そして森では動植物は採取しないで、大切に森を守りながら、横浜の自然を楽しんでください。」

自然観察の森を散策してみました

 自然観察の森には、遊具や飼育されている動物はいません。横浜に昔からあった自然環境をなるべくそのまま残し、野生生物を守る、生き物の賑わいのある森づくりを目指しています。
 野山の中には、自然観察センターや観察小屋が設置されています。そして自然観察センターを起点・終点とした4本の観察路があり、森の生き物たちと出会うことができます。各ポイントには、そこにいる生き物や環境について書かれた解説板もあるので、学びを深めながら森歩きを楽しめますよ。


カワセミがよく訪れる観察小屋もありました。この日は確認できず。


ポイントごとに案内があるのでわかりやすい

 途中の木々には木の名前や特徴を学べるマップに紐付く番号や、ひとことメモが掲示してあります。
 また、生き物たちにであえるネイチャートレイルが4つあります。観察のポイントは、目・耳・鼻・手・心をつかって、森を感じることだそうです。観察に役立つ自然観察シートも用意されていますので、お気軽に自然観察センターにお声かけください。

 ネイチャートレイル

  • ミズキの道 湿地・川・林・池など変化のあるコース(1時間半、約1.6キロ)
  • コナラの道 雑木林の尾根を行く、眺めのよいコース(1時間、約1.7キロ)
  • タンポポの道 いくつかの原っぱと雑木林、炭焼き窯をまわるコース(45分、約0.8キロ)
  • ウグイスの道 短時間でいろいろな自然をまわるお得なコース(30分、約0.7キロ)

春を探しにお近くの市民の森へ

 そろそろ暖かくなる季節、冬の間の運動不足解消に、近くにある市民の森へおでかけしてみませんか。横浜の森に住む生き物たちとの楽しい出会いがいっぱいです。

市民の森ガイドブックはこちら

このページへのお問合せ

環境創造局みどりアップ推進課

電話:045-671-2624

電話:045-671-2624

ファクス:045-224-6627

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